このページの要点
- 書面とメールは、両法の記載事項を一通にまとめてよい。ただし、片方の法律にしかない項目も落とせない。
- 支払期日はどちらも受領日から60日以内。再委託の30日の特例はフリーランス法にだけあり、取適法の枠は別に守る。
- 支払方法は現金振込に統一し、振込手数料は発注者が負担する。手形・電子記録債権は取適法で支払遅延になり得る。
- 罰則はどちらも罰金。取適法は明示・書面交付・書類保存の違反そのものが罰金の対象になる。
結論:重なる発注は、書面は足し合わせ、期日と支払方法は厳しい方に合わせる
一つの発注に、フリーランス法と、取適法(旧称は下請代金支払遅延等防止法で、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法)の両方がかかることがあります。どの発注がそうなるかの判定は対象になる発注者のページで整理しています。このページは、「両方かかる」と分かった後の話、つまり、書面、支払期日、支払方法、禁止行為、行政の措置と罰則が、二つの法律でどこまで同じで、どこが違うかを扱います。
結論から言うと、二つの法律の求めの大部分は重なっていて、違いが出る場所は限られています。そのため、法律ごとに社内の様式を二つ持つより、一つの様式と一つのカレンダーで、二つの法律の要求をまとめて満たすほうが、漏れが出にくくなります。まとめ方の原則は三つです。
- 書面とメール:両法の記載事項を一通にまとめて示してよい。ただし、片方の法律にしかない項目も落とせない(公正取引委員会Q&A問33)。
- 支払期日:どちらも、受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内。受領日を基準にした一つのカレンダーで管理し、フリーランス法だけにある特則は、取適法の枠を満たす場合に限って使う。
- 支払方法:現金での銀行振込に統一し、振込手数料は発注者が負担する。手形・電子記録債権・一括決済方式は使わない。
- 禁止行為と罰則:取適法には期間の要件がなく、協議の拒否や原材料等の早期決済など、フリーランス法にない禁止行為が加わる。書類の作成・保存や明示の違反が、取適法では直接罰金の対象になる。
各項目の詳しい書き方は、条件の明示が発注条件の明示のページ、支払期日の数え方が報酬の支払期日のページ、禁止行為が禁止行為の点検のページにあります。このページでは、それぞれを二つの法律で並べたときの差に絞ります。
重なる発注とは:パターンごとに、守る法律と揃えるもの
発注の組み合わせによって、かかる法律は変わります。相手方がフリーランス法の特定受託事業者(従業員を使わない個人、または一人の代表者以外に役員がなく従業員も使わない法人)に当たるかと、自社と委託の内容が取適法の基準に当たるかを、別々に見ます。代表的なパターンを並べると、次のとおりです。
発注のパターン別の適用法
| パターン | かかる法律 | 揃えるもの |
|---|---|---|
| 相手方:従業員のいない個人。自社:資本金などが取適法の基準に当たる法人で、委託が取適法の類型に当たる | 両方 | 書面は和集合。期日は受領日から60日。支払方法は現金。禁止行為は取適法の範囲まで |
| 相手方:従業員のいない個人。自社:個人事業主、または取適法の基準に当たらない法人 | フリーランス法のみ | 明示は全発注者の義務。支払期日以降の義務は、自社が従業員を使用するなど特定業務委託事業者に当たる場合 |
| 相手方:従業員を使う個人や法人(特定受託事業者でない)。自社:取適法の基準に当たる法人 | 取適法のみ | 取適法の明示・期日・禁止行為・書類の保存。遅延利息の規定も適用される |
| 相手方:従業員のいない個人。委託が自家利用の役務など、取適法の類型に当たらない | フリーランス法のみ | 取適法の対象外と考えて書面や期日を省かない |
同じ基本契約の下でも、案件ごと・相手方ごとに、適用される法律が変わることがあります。相手方が従業員を雇い始めれば、特定受託事業者でなくなりますし(そのとき取適法の中小受託事業者に当たるかは別に見ます)、自社の資本金や従業員の数が変われば、取適法の基準に当たるかも変わります。契約書は和集合で作り、適用される法律は案件ごとの台帳に記録する、という分け方が現実的です。相手方の状況の通知の条項は、対象になる発注者のページに条項例があります。
書面とメールを一本化する:和集合で作り、片方だけの項目を落とさない
明示の方法は、二つの法律で違いません。書面の交付か、電子メールその他の電磁的方法の提供で示します(フリーランス法3条1項、取適法4条1項)。電磁的方法で示したあとで、相手方から書面の交付を求められたら、遅滞なく交付する義務がある点も同じです(フリーランス法3条2項、取適法4条2項)。公正取引委員会のQ&A(問33)は、両法が適用される発注では、同一の書面やメールに、両法が定める記載事項を併せて一括で示してよいと説明しています。ただし、いずれか一方の法律だけが求める記載事項があるときは、その事項も記載する必要があります。
二つの法律で記載事項が違うところを、同Q&A(問36)の整理から、要点だけ拾うと次のとおりです。
明示事項の違い
| 記載事項 | フリーランス法 | 取適法 |
|---|---|---|
| 当事者の名称、委託日、給付・役務の内容、受領する期日と場所、検査の完了日、額、支払期日 | 明示する | 明示する |
| 手形で払う場合の手形の金額・満期 | 明示する(用いる場合) | 項目はない。手形の交付そのものが支払遅延になる |
| 一括決済方式(金融機関から貸付けや支払を受けられる方式)で払う場合 | 金融機関の名称、受けられる額、金融機関への支払期日 | 金融機関の名称、受けられる額と期間の始期、金融機関への支払期日(記載の細部が違う) |
| 電子記録債権で払う場合 | 債権の額、支払期日 | 債権の額と支払を受けられる期間の始期、支払期日(記載の細部が違う) |
| 資金移動業者の口座への資金移動で払う場合 | 資金移動業者の名称、資金移動の額 | 項目はない |
| 原材料等を発注者から有償で購入させる場合 | 項目はない | 品名・数量・対価・引渡しの期日、決済の期日と方法 |
| 再委託の支払期日の特例を使う場合 | 再委託である旨、元委託者の名称、元委託支払期日 | 項目はない(特例がない) |
| 内容が定められない事項がある場合 | 定められない理由と、定める予定の期日 | 定められない理由と、定める予定の期日 |
表のうち、手形・一括決済方式・電子記録債権・資金移動の欄は、現金振込に統一すれば、そもそも使いません。この統一は、書面の様式を簡素にする効果もあります。原材料の有償支給は、物品の製造では起こり得ますが、情報成果物や役務では通常ありません。再委託の特例は、後で扱います。
書面交付請求への対応には、少し違う例外が置かれています。フリーランス法の公正取引委員会規則3条2項は、①相手方の求めに応じて電磁的方法で明示した場合、②発注者の作成した定型約款を内容とする業務委託で、インターネットのみを利用して締結し、約款をインターネットで閲覧できる状態に置いている場合、③すでに書面を交付している場合を、書面交付の対象から外しています。取適法の規則4条は、①受託者が電磁的方法による提供を希望する旨を、書面または電磁的方法で申し出た場合、②すでに書面を交付している場合、③フリーランス法の規則の例外に当たる場合を挙げています。実務の結論は、相手方が電磁的方法を希望する旨を、メールなど記録が残る形で受けておくことです。取適法の例外は、申出が書面または電磁的方法によることを求めています。
書類の作成と保存は、取適法にだけある義務です。取適法7条と公正取引委員会規則は、給付の内容、受領、検査の結果、やり直し、代金の額と支払の状況などを記載した書類または電磁的記録を、受託者別に作成し、記載すべき事項の全部を記載した日から2年間保存することを求めています。発注書と支払の記録をつなげて検索できる形で残しておけば、この義務も満たしやすくなります。
条文例第○条(発注の方法と明示事項)
- 甲は、個別の発注ごとに、委託日、給付の内容、給付を受領する期日及び場所、検査をする場合はその完了期日、報酬の額(具体的な額の明示が困難な場合は算定方法)、支払期日及び支払方法その他関係法令が定める事項を、電子メールその他の電磁的方法又は書面により乙に示す。
- 前項の事項のうち一定の期間における発注に共通するものは、別紙の共通事項としてあらかじめ示し、個別の発注では共通事項によることを示す。
- 乙が電磁的方法による明示を希望するときは、その旨を書面又は電磁的方法により甲に申し出る。乙が電磁的方法で示された事項を記載した書面の交付を求めたときは、甲は遅滞なくこれを交付する。
- 甲は、報酬の支払につき、手形、一括決済方式、電子記録債権及び資金移動業者の口座への資金移動を用いない。
- 第一項の事項のうち発注の時点で定められないものがあるときは、甲は、その理由と定める予定の期日を示し、定まった後直ちにその内容を示す。
二つの法律の記載事項を一つの条にまとめ、現金振込に統一することで、法律ごとの記載欄の違いを減らす書き方です。具体的な項目の欄は発注書の様式で設けます
支払期日を一本化する:同じ60日でも、数え方と例外の置き方が違う
支払期日の基本は、どちらも同じです。受領した日(役務なら提供を受けた日)から数えて60日以内の範囲で、しかもできるだけ短い期間に期日を置く、という点です。検査をするかどうかは問いません。細かい点を並べると、違いが見えてきます。
支払期日の規定の比べ方
| 項目 | フリーランス法 | 取適法 |
|---|---|---|
| 根拠と義務を負う者 | 4条1項。特定業務委託事業者 | 3条1項。委託事業者 |
| 期日を定めなかったとき | 受領した日が支払期日とみなされる(4条2項) | 受領した日が支払期日とみなされる(3条2項) |
| 60日を超えて定めたとき | 60日を経過する日が支払期日とみなされる(4条2項) | 60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる(3条2項) |
| 払う義務 | 4条5項。受託者の責めに帰すべき事由で払えなかったときは、その事由が消滅した日から60日以内に払う | 5条1項2号(支払遅延の禁止)。受託者の責めによる遅れを例外とするただし書は置かれていない |
| 再委託の特例 | 元委託者への報酬の支払期日から30日以内(4条3項)。再委託である旨などを明示した場合に限る | 条文に同旨の規定は確認できない |
| 手形・電子記録債権など | 直ちには支払遅延にならないが望ましくない(Q&A問32) | 手形は支払遅延。換金に手間のかかる電子記録債権なども支払遅延(5条1項2号) |
| 遅延利息 | 条文に率の定めがない | 年14.6%(6条、公正取引委員会規則) |
| 月単位の締切制度(毎月末日締め翌月末日払い) | 受領から2か月以内として運用され、問題とされない(Q&A問48) | 受領後2か月以内として運用され、支払遅延として問題としない(テキスト) |
| 金融機関の休業日による順延 | 確認できていない | 2日以内の順延で、あらかじめ書面等で合意していれば、問題としない(テキスト) |
どちらに合わせるかの結論は、日付の設計では「同じ」です。受領日を起算点にした、60日以内のできる限り短い期日にして、月末締めなら翌月末払いまでに収めます。月単位の締切制度の例を日付で確かめておきます。
月末締め・翌月末払いの数え方の例
- 受領日(6月1日)
納品物を受領した。受領した日を1日目として数える
1日目
- 締切日(6月30日)
月末で締める
30日目
- 支払期日(7月31日)
翌月末に払う
61日目。受領後2か月以内として問題としない運用
公表資料にも、6月1日に受領した分を7月31日(61日目)に払う例が載っています。翌々月払いにすると、この枠を超えます
二つの法律で扱いが分かれるのは、再委託の特例です。フリーランス法4条3項は、元の委託者から受けた仕事を再委託し、再委託である旨、元委託者の名称、元委託支払期日を明示したときに、元委託支払期日から30日以内に払う設計を認めます。取適法3条には、これに当たる特例の規定は見当たりません。両法が重なる再委託の取引でこの特例を使うと、元委託支払期日から30日の日が、受領日から60日を超えることがあり、その場合は取適法の枠を外れるおそれがあります。重なる取引での特例の扱いを説明した所管官庁の資料は、今回確認できていません。そのため、安全側の運用として、重なる取引では、受領日から60日以内に払う設計にして、特例に頼らないことをお勧めします。再委託の明示事項は元請としての再委託のページにあります。
遅延利息の違いも、契約書に響きます。取適法の対象になる取引では、支払期日までに払わなかったときは、受領日から60日が過ぎた日以降、払う日までの日数に応じて、年14.6%の遅延利息が、法律上、受託者に対して生じます(6条)。フリーランス法には率の定めがないため、契約書の遅延損害金の条項と民法の定めで考えます(報酬の支払期日のページに条項例があります)。重なる取引の契約書では、遅延損害金の率を決めるときに、取適法の率と食い違わないかを確かめます。
禁止行為の違い:重なる取引で追加で気をつけること
禁止行為の枠は、二つの法律でよく似ていますが、番号の付き方と範囲が違います。フリーランス法は5条1項・2項と6条3項、取適法は5条1項・2項に定めがあります。違いの大きなところを並べます。
禁止行為の対応表
| 行為 | フリーランス法 | 取適法 |
|---|---|---|
| 受領拒否 | 5条1項1号。役務の提供の委託は対象外 | 5条1項1号。役務提供委託・特定運送委託は対象外 |
| 支払遅延 | 4条5項(払う義務) | 5条1項2号(手形の交付などを含む) |
| 報酬・代金の減額 | 5条1項2号 | 5条1項3号 |
| 返品 | 5条1項3号。役務の提供の委託は対象外 | 5条1項4号。役務提供委託・特定運送委託は対象外 |
| 買いたたき | 5条1項4号 | 5条1項5号 |
| 購入・利用の強制 | 5条1項5号 | 5条1項6号 |
| 申出・通報を理由とする不利益な取扱い | 6条3項(公正取引委員会・中小企業庁長官への申出) | 5条1項7号(公正取引委員会・中小企業庁長官・事業所管大臣への通報) |
| 経済上の利益の提供要請 | 5条2項1号 | 5条2項2号 |
| 給付内容の変更・やり直し | 5条2項2号 | 5条2項3号 |
| 原材料等の対価の早期決済 | 規定なし | 5条2項1号(役務提供委託・特定運送委託は対象外) |
| 費用の変動などに関する協議に応じない一方的な代金決定 | 独立した号はない。費用上昇の協議をせず従来どおりの報酬を一方的に定めた例が、買いたたきとして勧告された | 5条2項4号 |
| 対象となる委託の期間 | 5条は1か月以上の委託(施行令1条) | 期間の要件なし |
重なる取引で見落としやすいのは、三点です。第一に、期間の要件です。フリーランス法の5条は1か月以上の委託が対象ですが、取適法は、委託の期間にかかわらず禁止行為が適用されます。短期の単発の発注でも、取適法の対象になる取引であれば、減額や買いたたきなどの禁止行為の点検が必要です。第二に、協議に応じない一方的な代金決定です。取適法は、費用の変動などの事情が生じて受託者から協議を求められたのに、協議に応じず、または必要な説明をしないまま一方的に代金を決めることを、独立した禁止行為にしています。フリーランス法でも、費用上昇の反映について十分な協議をせず、従来どおりの報酬を一方的に定めたことが、買いたたきとして勧告された例があります。報酬の改定の手順を契約書に置いておく理由は、ここにあります(報酬の決め方のページ)。第三に、原材料等の対価の早期決済は、取適法にだけある禁止行為で、物品の製造で原材料を有償で支給するときに関係します。
禁止行為の条項ごとの点検の仕方は、禁止行為の点検のページに譲ります。両法が重なる取引では、同じ条項が二つの法律の別々の号に当たることがあります。契約書の点検では、条文の番号ではなく、「何をする条項か」で整理しておくと、二重に確認する手間が減ります。
行政の措置と罰則:どちらの法律で、誰が、何をするか
違反があった場合の手続は、二つの法律で似ていますが、担当と罰則の置き方が違います。発注者の側からは、「どの違反が、どの段階で罰金に結び付くか」を押さえておくと、優先順位をつけやすくなります。
措置と罰則の違い
| 項目 | フリーランス法 | 取適法 |
|---|---|---|
| 担当する機関 | 取引の適正化に関する規定(3条〜6条)は公正取引委員会と中小企業庁。就業環境の整備に関する規定(12条〜14条、16条)は厚生労働省 | 公正取引委員会、中小企業庁、事業を所管する大臣(8条、9条、12条) |
| 指導・助言 | 22条 | 8条 |
| 勧告 | 8条(3条、4条5項、5条、6条3項の違反) | 10条(5条の違反) |
| 命令と公表 | 勧告に従わないときの命令(9条1項)。命令をしたときは公表できる(同条2項) | 条文に、命令の規定は確認できない。公正取引委員会は、勧告の内容を一覧で公表している |
| 罰金(50万円以下)の対象 | 命令への違反、報告をしない・虚偽の報告をする、検査を拒む(24条)。法人にも科される(25条) | 明示の義務違反(4条1項)、書面を交付しない(4条2項)、書類・電磁的記録を作成せず・保存せず・虚偽のものを作成(7条)(14条)。報告・検査の拒否など(15条)。法人にも科される(16条) |
表から、発注者の立場で分かることが二つあります。一つは、罰則が罰金であって、拘禁刑の定めはないことです。もう一つは、フリーランス法では、明示の義務(3条)に違反しても、それ自体に直接の罰則はなく、勧告、命令を経て、命令に違反すると罰金になるのに対し、取適法では、明示の義務違反と、書類の作成・保存の義務違反そのものが罰金の対象になることです。取適法の対象になる取引では、発注書と記録の整備は、行政の指導を待たずに守る義務になります。
実際に、公正取引委員会が公表した令和7年度の運用状況(令和8年6月10日公表)では、フリーランス法の措置の違反行為類型別で、期日における報酬支払義務違反と取引条件の明示義務違反が、それぞれ4割ほどを占めました。取適法の勧告一覧(令和8年度分)にも、手形による支払や、受領日から60日目までに払わなかった型が載っています。どちらの法律でも、最初に指摘されるのは、書面と期日という基本の部分です。勧告や指導の型の詳細は報酬の支払期日のページの公表資料の節に、トラブルが起きた後の流れはトラブルとよくある質問のページにあります。
社内ルールに落とし込む:基本契約・発注書・経理台帳の三か所
一本化は、三か所に分けて進めると整理しやすくなります。契約書で枠を決め、発注書で個別の条件を示し、経理の台帳で期日を管理する、という分担です。
三か所で一本化する内容
基本契約
- 支払方法を現金振込とし、振込手数料は発注者の負担と書く
- 支払期日の既定値を、受領日から60日以内のできる限り短い日にする
- 相手方の従業員の状況の通知と、変更があったときの通知を置く
- 再委託の特例は使わない、または取適法の枠を満たす場合に限ると決める
発注書・発注メール
- 二つの法律の記載事項を和集合で並べた様式にする
- 支払期日と支払方法の欄を空欄で出せないようにする
- 共通事項は別紙で示し、個別の発注は共通事項による旨を書く
- 電磁的方法を希望する旨の申出をメールなどで受ける
経理台帳
- 受領日(受信日時などの記録)と支払期日、案件ごとの適用法を載せる
- 月末締め・翌月末払いまでに収まっているかを確認する
- 受託者別に、給付・受領・検査・支払の記録を保存し、2年間残す
- 振込手数料や名目付きの差引がないか、支払前に確認する
契約書は和集合で作り、適用される法律は案件の台帳で管理します。重なるかどうかの判断が揺れる取引は、重なるものとして扱うほうが漏れません
書き方の例(一般的な例) 重なる取引の契約書で見直す書き方(一般的な例)
振込手数料
理由合意があっても、振込手数料を報酬から差し引くことは減額に当たる扱いになった。差し引く書き方は残さない。
再委託の報酬
理由元請の入金を条件にする書き方は、どちらの法律の枠にも合わない。両法が重なる取引では、特例に頼らず受領日から数える。
適用法の書き方
理由適用される法律は、契約の文言ではなく事実で決まる。一つの法律に限定する書き方は、他方の義務を落とす原因になる。
確認の問いと理由一本化の前に確かめる問い
自社の発注は、案件ごとに、どちらの法律の対象になるかを台帳で追えるか
相手方の従業員の状況や、委託の内容で、適用が変わります。台帳で追えないと、書面の様式や期日の設計を一本化しても、点検の対象が分かりません。
支払方法に、現金振込以外が混ざっていないか
手形や電子記録債権が一部の取引に残っていると、取適法の対象になる取引で支払遅延に当たるおそれがあります。
再委託の取引で、元委託支払期日を基準にした期日を使っていないか
重なる取引でこの特例を使うと、取適法の60日の枠を外れるおそれがあります。受領日から数えた日数で確かめます。
受託者別に、給付・受領・検査・支払の記録を、2年間検索できる形で残しているか
取適法7条の義務で、違反は罰金の対象です。発注書と支払の記録をつなげておくと、点検も楽になります。
重なる発注の点検リスト
- 発注書の様式が、二つの法律の記載事項の和集合になっている
- 支払期日が、受領日から60日以内で、月末締めなら翌月末払いまでに収まっている
- 支払方法が現金振込で、振込手数料を発注者が負担している
- 手形・電子記録債権・一括決済方式・資金移動を使う取引が残っていない
- 再委託の取引で、受領日から60日以内に払う設計になっている
- 費用の変動があったときの報酬の協議の手順が、契約書にある
- 受託者別の給付・受領・検査・支払の記録を、2年間保存している
- 相手方の従業員の状況の通知と、変更時の通知の仕組みがある
起きがちなこと
両法が重なる発注でつまずきやすい場面
- 相手方が個人だったため、フリーランス法だけを見て発注書を作った。自社が取適法の基準に当たる法人で、取適法にしかない記載事項や、書類の保存義務が抜けていた。
- 取適法の対象になる取引で、再委託の特例を使って「元請の入金から30日以内」の期日を定めた。受領日から数えると60日を超えていた。
- 手形での支払をやめたつもりが、電子記録債権や一括決済方式の取引が一部に残り、受託者が割引を受ける必要のある期日設定になっていた。
- 振込手数料の負担を合意していたため、報酬から差し引いていた。合意があっても減額に当たる扱いに変わっていることを、経理が把握していなかった。
- 取適法には期間の要件がないことを知らず、単発の短い発注では、減額や買いたたきの点検をしていなかった。
- 書面を二通作るのが負担で、片方の法律の項目だけの発注書にしていた。一通にまとめてよいことと、片方だけの項目も必要なことの両方を把握していなかった。
重なる取引の運用を整えたら、次は発注条件の明示の様式の点検、報酬の支払期日のカレンダーづくり、禁止行為の点検と進めます。契約書の条項そのものの整え方は、これらのページに条項例を置いています。
出典:e-Gov法令検索(フリーランス法、取適法、それぞれの公正取引委員会規則と政令。2026年10月22日時点の施行済みの条文)、公正取引委員会のフリーランス法Q&A(令和8年8月26日時点版)、公正取引委員会・中小企業庁の「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)、公正取引委員会が令和8年6月10日に公表した令和7年度のフリーランス法の運用状況の資料、同委員会の「取適法勧告一覧」。いずれも2026年10月22日に内容を確認しました。
よくあるご質問
フリーランス法と取適法の両方が適用される発注では、書面を二通出す必要がありますか?
二通は要りません。公正取引委員会のQ&A(問33)は、両法が適用される発注では、同一の書面や電子メール等で、両法が定める記載事項を併せて一括で示してよいと説明しています。ただし、いずれか一方の法律だけが求める記載事項があるときは、その事項も記載する必要があります。たとえば、手形の金額・満期はフリーランス法の明示事項、原材料等の有償支給に関する事項は取適法の明示事項です(問36)。
取適法の対象になる取引で、再委託の「元委託支払期日から30日」の特例は使えますか?
特例を定めているのはフリーランス法4条3項で、取適法3条には、これに当たる規定は見当たりません。取適法の対象になる取引では、受領した日から60日以内という枠が別にあります。重なる取引での特例の扱いを説明した所管官庁の資料は、今回確認できていないため、安全側の運用として、受領日から60日以内に払う設計にして、特例に頼らない方法をお勧めします。
手形や電子記録債権で報酬を払うことはできますか?
取適法の対象になる取引では、手形の交付は支払遅延の禁止(5条1項2号)に当たり、電子記録債権や一括決済方式も、期日までに現金化するために受託者が割引などをする必要がある場合は支払遅延に当たります。フリーランス法のみが適用される取引では、直ちに支払遅延になるわけではありませんが、望ましくないとされ(Q&A問32)、用いる場合は明示事項やサイト(60日以内)、割引料の協議などの条件があります(問31)。両法が重なる可能性のある取引では、現金振込に統一するのが安全です。
二つの法律で、罰則はどう違いますか?
どちらも罰金(50万円以下)で、拘禁刑の定めはありません。フリーランス法では、命令への違反や、報告をしない・虚偽の報告をする、検査を拒むといった場合が対象です(24条)。取適法では、明示の義務違反(4条1項)、書面を交付しない(4条2項)、書類・電磁的記録を作成・保存しない(7条)といった違反そのものが罰金の対象になります(14条)。禁止行為の違反は、勧告の対象です(10条)。
外注先が従業員を雇い始めたら、適用される法律は変わりますか?
相手方が従業員を使用するようになると、フリーランス法の特定受託事業者に当たらなくなり、同法の対象から外れます。その場合でも、自社と委託の内容が取適法の基準に当たれば、取適法の対象になります。逆に、取適法の基準に当たらなければ、どちらの法律の対象にもならないことがあります。適用の変化に気づけるよう、契約書に従業員の状況の通知と変更時の通知の条項を置き、案件の台帳で適用法を見直します。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁