成果物の検収:検査基準・検査期間・みなし検収・契約不適合

納品物が期待と違うとき、不合格にできる根拠は検査の基準にあります。基準、期間、記録の三つで検収を設計し、報酬の支払期日が検査に左右されないことと、禁止行為との接点を押さえます。

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「満足したら合格」と書くと、合否の基準がなくなり、修正の依頼も終わらなくなります。

このページの要点

  • 検査の基準は仕様書の項目と結び付ける。主観的な満足や、仕様書にない事項では合否を決めにくい。
  • 検査の期間・みなし検収・再検査の期間を区切る。報酬の支払期日は検査に左右されず、受領日から60日以内。
  • 不合格の連絡は、受領拒否・減額・返品の禁止に触れない手順で行う。まず受け取り、不適合を示して追完を求める。
  • 契約不適合は民法562条〜564条・637条を出発点に、通知期間と責任の範囲を取引に合わせて決める。準委任は報告書・稼働記録で確認する。

結論:検収は、仕様と結び付いた基準・短い期間・記録の三つで設計する。報酬の期日は検収に左右されない

フリーランスに発注した成果物を受け取ったとき、期待した内容と違う、品質が足りない、と感じることがあります。そのときに発注者が持っているはずの手段は、検査をして不合格を伝える、直してもらう、報酬を減らす、契約を解除する、などです。ところが、これらは自由に使えるわけではありません。何をもって合格とするのかを決めていないと、不合格にできる根拠が弱くなります。不合格の連絡が遅れると、「受け取ったのに黙っていた」と受け止められます。報酬を減らす手段は、禁止行為との関係で、慎重な設計が必要になります。

まず押さえておくべき前提があります。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」)4条1項は、報酬の支払期日を、検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、できる限り短い期間内に定めなければならない、としています。検収に時間がかかったからといって、支払期日を後ろへ動かすことはできません。検収の設計は、支払の設計とは別に、受領から60日の枠の中に収める必要があります。

  • 検査の基準は、仕様書や発注書の記載と結び付ける。「発注者が満足するまで」「十分な品質」は、合否の基準になりにくい。
  • 検査の期間は、受領後の一定の営業日以内に区切る。期間内に結果の連絡がなければ合格とみなす条項は、発注者自身の運用を促す効果もある。
  • 不合格のときは、不適合の内容を具体的に示して、追完(修補・再提出)を求める。再提出の期間と、再検査の期間も決める。
  • 検査を完了する期日は、検査をする場合の明示事項である(公正取引委員会規則1条1項6号)。
  • 契約不適合の通知期間は、民法637条(不適合を知った時から1年以内の通知)を出発点に、契約でどう調整するかを決める。
  • 準委任の業務は成果物がないので、報告書や稼働記録で履行を確かめる。成果物型の検収の書き方をそのまま当てはめない。

支払期日の数え方は支払期日のページに、受領の拒否・減額・返品が禁止行為に当たる場面は禁止行為の点検のページにまとめています。このページでは、検査の基準・期間・記録の作り方と、契約不適合の扱いに絞ります。仕様の置き方は仕様と追加依頼のページと続けて読むと分かりやすくなります。

検査の基準を、仕様と結び付ける

「検収」という言葉は、契約書では、「納品物が契約に適合しているかを確かめる手続」を指して使われることが多いものです。何を確かめるのかが決まっていなければ、手続は成立しません。発注者が納品物を見て「イメージと違う」と感じることは、現実には多いのですが、イメージと契約の内容は別の話です。契約の内容に適合しているかどうかを確かめるには、契約の内容を、確かめられる形で書いておく必要があります。

書き方の例(一般的な例) 検査基準の条項(一般的な例)

合否の基準

よくある書き方甲は、納品物を検査し、甲が満足する品質であることをもって合格とする。
整えた書き方甲は、納品物が、仕様書(別紙○)に記載された項目を満たしているかを検査し、満たしているときは合格とする。仕様書に記載のない事項は、検査の基準としない。

理由主観的な満足ではなく、書面の項目で合否を決める。仕様書にない事項で不合格にできないことは、発注者にとっての制約でもあるので、仕様書の作り込みが前提になる。

検査の方法

よくある書き方甲は、適切な方法により検査を行う。
整えた書き方検査は、仕様書の項目ごとに、動作確認・目視確認・数値の確認のいずれかの方法で行い、結果を一覧にして乙に通知する。

理由誰がどう確認するかが分かる形にする。結果の一覧は、不合格のときの指摘にそのまま使える。

不合格の通知

よくある書き方不合格の場合は、甲が乙に連絡する。
整えた書き方不合格のときは、甲は、不合格の項目と、仕様書のどの記載に適合していないかを、書面又は電磁的方法で乙に通知する。

理由不適合の内容を具体的に示す。受託者が直せる程度の情報がなければ、追完を求めても進まない。

基準を確認できる項目にするためには、仕様書に、数値、形式、動作、納品物の構成といった、確認できる記載が必要です。たとえば、文章の制作であれば、文字数、構成、盛り込むべき事項、禁止する表現を挙げる。デザインであれば、サイズ、色の指定、納品形式、用途ごとのデータの種類を挙げる。開発であれば、機能一覧、動作環境、テストの項目を挙げる。ここまで書いても、感性に属する部分(好みやトーン)は残ります。感性に属する部分は、制作の途中で方向性を確認し、確認した結果を記録に残すことで、最後に「違う」と言いにくくなる状態にしておきます。完成品を見て初めて好みを言う設計は、受託者にとっても発注者にとっても、効率が悪いものです。

仕様書がなく、依頼のメールだけで発注した取引では、検査の基準は、メールの内容になります。この場合、メールの記載が曖昧であれば、基準も曖昧になります。仕様と追加依頼のページで述べた事項のうち、特に成果物の種類・数量・形式・品質の基準だけでも、依頼の段階で文字にしておくと、検査が成り立ちます。

検査期間・みなし検収・再検査:期間を区切り、結果を連絡する

検査の期間を決めずに放置すると、受託者は、納品物がいつ合格になるのか分からない状態に置かれます。しかも、受領の日から60日という報酬の期日は、検査にかかわらず進みます。検査が遅れたまま期日が来れば、検査が終わっていない納品物の報酬を払うかどうか、という場面になります。検査の期間は、受領から数営業日、長くても1〜2週間程度の、運用できる日数で区切るのが一般的です(日数は取引の性質によります。ここでは伏せ字にします)。

期間内に連絡がなければ合格とみなす条項(みなし検収)は、受託者を保護する書き方として知られていますが、発注者にとっても利点があります。社内で検査の担当を決め、期限を意識する動機になります。みなし検収があると、検査を失念したまま不合格を主張できなくなる点が不利ですが、それは「検査の期間を確保する」運用で補います。みなし検収の条項があっても、民法の契約不適合の規定が働かなくなるわけではありません。みなし検収の後に見つかった不適合をどう扱うかは、次節の契約不適合の通知期間の定めと整合させる必要があります。

検査から支払までの時間軸の例(日数は伏せ字)

  1. 0日目(受領日)

    納品物を受領する

    支払期日の起算点。ここから60日の枠が進む

  2. ○営業日以内

    検査を完了し、結果を通知する(検査を完了する期日として発注書に明示)

    合格なら検収完了。不合格なら不適合の内容を通知

  3. 不合格の場合

    受託者が追完(修補・再提出)する

    再提出の期限を決める。再提出を受けた日から、再検査の期間が始まる

  4. 再検査の期間

    再提出分を検査し、結果を通知する

    再検査の回数に上限を置くか、置く場合の超過時の扱いを決める

  5. 支払期日

    受領日から数えて60日以内の、定めた日に報酬を払う

    検査の結果が出ていなくても、期日は動かない。検査が長引いたときの扱いを、事前に決めておく

検査を完了する期日は、検査をする場合の明示事項です(公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則1条1項6号)。再提出の扱いは、再提出分を新たに受領した日とみるのかなど、細部が条文だけでは決まらないため、官公庁の解説資料の原文で確認が必要です。

条文例第○条(検査)

  1. 甲は、乙から納品物を受領した日から○営業日以内に、第○条(検査の基準)に従って検査を行い、その結果を乙に通知する。
  2. 前項の期間内に甲が通知をしないときは、納品物は検査に合格したものとみなす。ただし、納品物が第○条の仕様に適合しない場合に、甲が第○条(契約不適合)に基づく権利を行使することを妨げない。
  3. 検査に不合格のときは、甲は、不適合の内容を具体的に示し、相当の期間を定めて、修補又は再提出を求めることができる。
  4. 乙が前項の修補又は再提出をしたときは、甲は、その日から○営業日以内に再検査を行い、結果を通知する。再検査には、第1項及び第2項を準用する。
  5. 検査の合否は、報酬の支払期日に影響しない。甲は、第○条に定める支払期日までに報酬を支払う。

みなし検収は、検査の期間を確保するための仕組みです。第2項のただし書で、見落としに備えた権利を残しています。第5項は、報酬の期日が検査と切り離されていることを、条項の中で確認する趣旨です。

受領拒否・減額・返品との接点:不合格の連絡で越えてはならない線

検査で不合格にしたとき、発注者の対応は、おおむね三つに分かれます。納品物の受け取りを拒む、報酬を減らす、納品物を返す。これらは、フリーランス法5条1項で禁止される行為(受領拒否、報酬の減額、返品)と重なります。同項は、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと(1号)、報酬の額を減ずること(2号)、給付を受領した後にその給付に係る物を引き取らせること(3号)を禁止しています。

この禁止は「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに」という限定が付いています。納品物に実際に不適合があり、受託者の責めに帰すべき事由があるときは、不合格として追完を求めること自体は、禁止の対象ではありません。しかし、どのような場合が「責めに帰すべき事由」に当たるのか、納品物に軽微な不具合があるだけで受領を拒めるのか、といった線引きは、公正取引委員会などが公表している解説資料の原文で確認する必要があり、条文だけで断定することはできません。

不合格のときの対応と、禁止行為との関係(フリーランス法5条1項)

対応関係する禁止行為設計上の注意
納品物の受取りを拒む1号(受領拒否)役務の提供を受ける委託(準委任など)では、1号・3号は適用の対象から除かれている(5条1項本文のかっこ書)。物品や情報成果物では、受託者に責めがない場合の拒否が禁止されることに注意する。
不合格を理由に報酬を減らす2号(報酬の減額)受託者に責めがない場合の減額は禁止。契約に「不合格なら減額」と書いていても、禁止行為に当たる運用はできない。追完を求め、直らない場合の扱いを別に決める。
納品物を返品する3号(受領後の引取り)受託者に責めがないのに引き取らせることが禁止。不適合があるときの返却は、契約不適合の追完・解除の手続に位置づける。
やり直しを求める5条2項2号(受領後のやり直し)受託者に責めがないのに受領後に給付をやり直させることは禁止。仕様に適合させるための修補は、受託者に責めがあるときの追完として整理する。

また、1号から3号は、5条1項の冒頭にあるとおり、政令で定める期間以上の期間行う業務委託(更新により継続するものを含む)に限って適用されます。その期間は、フリーランス法施行令1条により、1月とされています。短期の単発の業務委託では、1項の各号は適用されませんが、2項(金銭等の提供要求、受領後のやり直し等)は期間にかかわらず適用されます。短期だから大丈夫と考えるのではなく、発注者の雛形は、期間の長短にかかわらず運用できる設計にしておくのが安全です。

取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)の対象になる取引では、5条1項各号と2項で、同様の禁止があります。役務提供委託の場合に1号(受領拒否)と4号(返品)が除かれる構造も、フリーランス法と似ています。どちらの法律の対象になるかは対象の判定のページで整理しています。

契約不適合:追完・減額・損害賠償・解除と、通知の期間

検収が済んだ後に不具合が見つかったとき、発注者が取れる手段は、民法の契約不適合責任の規定が基本になります。請負の契約でも、売買の契約不適合の規定(562条から564条)が準用されます(559条)。種類または品質に関して契約の内容に適合しないものを引き渡されたとき、発注者は、目的物の修補などの履行の追完を請求できます(562条1項)。発注者が相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(563条1項)。これらは、損害賠償の請求や契約の解除を妨げません(564条、415条、541条、542条)。

請負では、通知の期間にも決まりがあります。民法637条1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除ができなくなる、としています。請負人が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されません(同条2項)。また、不適合が注文者の供した材料の性質や注文者の与えた指図によって生じたときは、原則として、これらの権利を行使できません(636条本文)。

契約不適合に関する民法の規定(e-Gov法令検索で確認した要旨)

559条

売買の規定は、売買以外の有償契約に準用される。ただし、有償契約の性質がこれを許さないときは除く。

562条1項

引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は、修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる。

563条1項

相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。

564条

追完請求・代金減額請求の規定は、損害賠償の請求と、解除権の行使を妨げない。

636条

請負で、注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由とする追完等はできない。ただし、請負人が不適当であることを知りながら告げなかったときは別。

637条

請負で、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しないときは、追完・減額・損害賠償・解除ができなくなる。請負人が不適合を知り、または重大な過失で知らなかったときは適用されない。

契約不適合の規定は、契約書で別段の定めをすることができます。ただし、発注者と受託者の間で、受託者に一方的に有利または不利な定めがあるときは、取引上の優越的地位の濫用など、別の問題が生じ得ます。

契約書の実務では、この期間を契約で短縮する例が少なくありません。たとえば「検収日から○日以内に通知がなければ責任を負わない」という書き方です。これは、受託者の保護になる書き方で、発注者の側の雛形には、通知期間を長く設ける例もあります。発注者としては、①納品物の性質から見て、不具合が分かるまでに時間がかかるものは、通知期間を長めに置く。②すぐに分かる性質のものは、短くしても実害は少ない。③期間を短くすると、受託者の責任が軽くなる一方で、期間経過後の不具合が、発注者の負担になる。この三点を考えて、取引ごとに決めます。

書き方の例(一般的な例) 契約不適合の条項(一般的な例)

通知期間

よくある書き方乙は、検収後○日を経過した後は、一切の責任を負わない。
整えた書き方乙は、検収後○か月以内に甲が通知した契約不適合について、第○項の追完の責任を負う。ただし、乙が不適合を知り、又は重大な過失により知らなかったときは、この期間の制限を受けない。

理由期間の定めと、受託者が不適合を知っていた場合の例外をセットにする。民法637条2項と同じ考え方に揃える。

追完の方法

よくある書き方乙は、甲の指示する方法で無償で修補する。
整えた書き方乙は、甲の請求に応じ、修補、再提出その他の方法で追完する。ただし、甲に不相当な負担を課さないときは、乙は、甲が請求した方法と異なる方法で追完することができる。

理由追完の方法を発注者が一方的に指定する書き方より、民法562条1項ただし書の考え方に沿った書き方のほうが、受託者に受け入れられやすい。

責任の範囲

よくある書き方契約不適合に起因する一切の損害を乙が賠償する。
整えた書き方乙の損害賠償責任は、乙の責めに帰すべき事由による契約不適合に限り、直接かつ現実に生じた通常の損害に限る。上限は、当該業務の報酬の額とする。

理由上限のない賠償責任を求める書き方は、受託者が引き受けにくい。取引の規模に応じて、上限と範囲を決める。

準委任型で成果物がないとき:履行の確認と、不具合連絡の期間

成果物の完成を約束しない準委任型の業務(運用代行、事務代行、コンサルティング、稼働時間に基づく開発支援など)は、成果物の検収という考え方が当てはまりません。委任は、法律行為をすることを委託する契約で(民法643条)、法律行為でない事務の委託には準用されます(656条)。履行の確認は、成果物の合否ではなく、事務の処理が契約どおりに行われたかを、報告書や稼働記録で確かめる形になります。

報酬との関係では、民法648条2項が、委任事務を履行した後でなければ報酬を請求できないとし(期間によって報酬を定めたときは、624条2項の準用で期間の経過後)、3項が、履行の中途で終了したときや、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときは、履行の割合に応じて報酬を請求できる、とします。成果に対して報酬を払う約束をした委任では、成果の引渡しと報酬の支払は同時履行となります(648条の2第1項)。準委任型の業務を、成果型の報酬で委託する場合は、どの成果をどう確認するのかを条項に書きます。

成果物型と準委任型の検収の違い

成果物型(請負に近い)

  • 合否の基準:仕様書の項目。
  • 確認の方法:納品物の検査。
  • 不適合:追完、減額、損害賠償、解除。
  • 通知の期間:民法637条を出発点に契約で調整。

準委任型

  • 確認の対象:事務の処理の状況(報告書、稼働記録、議事録)。
  • 確認の方法:定期の報告の受領と、内容の確認。
  • 問題が出たとき:是正の要求、報告の再提出、契約の見直し。
  • 報酬:稼働時間や期間に応じて。

どちらの型か判断しにくい業務は、業務ごとに分けて書くのが整理しやすい方法です。全体像のページ(全体像)で、契約の型の選び方を扱っています。

準委任型でも、「納品後の不具合連絡の期間」が必要になる場面があります。たとえば、運用代行で作成した資料やレポートが提出された後に、誤りが見つかった場合です。この場合、成果物の検収の仕組みを借りて、提出から一定の期間内に誤りの指摘と訂正の依頼ができる、と書いておく方法があります。ただし、準委任の事務処理の責任は、民法の委任の考え方(受任者の注意義務)に基づくもので、成果物の完成の責任ではありません。この違いを曖昧にしたまま、成果物型の契約不適合責任の言葉を持ち込むと、責任の範囲の解釈が分かれます。

検査の記録の残し方と、検収体制の作り方

検収の体制は、仕組みを複雑にする必要はありません。むしろ、最小限の記録が残ることのほうが重要です。検査の結果と、その日付と、担当者が分かれば、後から争いになったときに、事実を示せます。禁止行為との関係でも、受領拒否や減額が、受託者の責めに帰すべき事由に基づくものだったことを説明するには、不適合の事実を記録しておく必要があります。

確認の問いと理由検収体制を作るときの確認の問い

  1. 検査の担当者と、その代理は決まっているか

    担当者が不在のまま期間が過ぎると、みなし検収が成立したり、受領を放置したと見られたりします。代理を決めておきます。

  2. 検査の基準は、検査をする人が見られる場所にあるか

    仕様書や発注書が、検査の担当者の手元になければ、基準どおりの検査ができません。

  3. 不合格を伝える書面の様式を用意したか

    不合格の項目と、仕様書のどの記載に適合しないのかを書く様式があれば、指摘が具体的になります。

  4. 受領日と検査結果の日付を台帳に残しているか

    支払期日の管理と、検査の期間の管理が、同じ台帳でできます。

  5. 報酬の留保や減額を、検収の結果と結び付ける運用はないか

    禁止行為との関係が生じます。禁止行為の点検のページで確認します。

検収の結果で揉めたときの対応の流れは、トラブルとよくある質問のページで、催告・解除・精算の順に整理しています。

起きがちなこと

検収まわりで起きがちなこと

  • 「満足したら合格」と書いたため、合否の基準がなくなり、何度修正を求めても終わらなくなった。検査の基準は、仕様書の項目で書く。
  • 検査の担当者が不在で、検査の期間が過ぎ、みなし検収が成立していた。担当者の代理と、期間の管理の運用を決める。
  • 検収が終わるまで報酬を払わないと決めて待つうちに、受領から60日を過ぎた。報酬の期日は検査にかかわらず進むので、検査の期間を短く区切る。
  • 軽微な不具合を理由に、受領そのものを拒んだ。受領の拒否は禁止行為に当たることがあるので、受け取ったうえで追完を求める手順を取る。
  • 不具合を理由に、報酬の一部を差し引いて払った。追完の催告を経ず、一方的に減らすと、減額の禁止に触れることがある。
  • 契約不適合の通知期間を極端に短くしたため、後から見つかった重大な不具合に対応できなかった。取引の性質に合わせて期間を決める。
  • 準委任の業務に、成果物型の検収条項をそのまま入れ、何を確認すべきか不明になった。業務の型ごとに確認の方法を分ける。

よくあるご質問

検収で不合格にできるのは、どのような場合ですか?

契約の内容、つまり仕様書や発注書に書かれた基準に適合していない場合です。主観的に満足できないというだけでは、基準が書かれていなければ、不合格とする根拠が弱くなります。不合格にするときは、不適合の項目と、仕様書のどの記載に適合しないのかを具体的に示して、追完(修補・再提出)を求めます。

検収が終わるまで、報酬の支払を待ってもよいですか?

フリーランス法4条1項は、検査をするかどうかを問わず、受領した日から起算して60日の期間内に支払期日を定めるよう求めています。検収の完了を待って支払を始める設計は、受領から60日を超える可能性があります。検査の期間を短く区切り、報酬の期日は受領日基準で書きます。

納品物に問題があったので、報酬を減らして払ってよいですか?

特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬を減ずることは、一定期間以上の業務委託で禁止されています(フリーランス法5条1項2号)。受託者に責めがある不適合の場合でも、まず追完を催告し、それでも直らない場合に減額を請求するという民法の順序(562条、563条)に沿って行うのが基本です。契約書の「不合格なら減額」という条項が、禁止行為に当たる運用を許すものではありません。

契約不適合を知ったとき、いつまでに通知すればよいですか?

請負については、民法637条1項により、不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、追完・報酬の減額・損害賠償・解除ができなくなります。契約でこれより短い期間を定めている場合は、その定めの有効性と運用を確かめます。請負人が不適合を知り、または重大な過失で知らなかったときは、この期間制限は適用されません(同条2項)。

みなし検収の条項は入れたほうがよいですか?

入れるかどうかは取引ごとの判断ですが、検査の期間を確保し、受託者を不確定な状態に置かない効果があります。入れるときは、みなし検収の後でも契約不適合に基づく権利は妨げられない旨のただし書を添え、通知の期間の定めと整合させます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁

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