フリーランスへの報酬の支払期日:受領日から60日以内の数え方

月末締め翌月末払いなら足りるとは限りません。支払期日の起算は、請求書の到着や検収の完了ではなく、給付を受領した日です。経理の流れを契約書の条項と社内のカレンダーに落とし込む順序を、条文と書き方の例で整理します。

トップページ › フリーランスへの報酬の支払期日:受領日から60日以内の数え方
請求書が遅れたら期限を延ばす、検収が終わるまで払わない、という書き方は、60日の枠と衝突します。

このページの要点

  • 支払期日の起算は受領した日。検査の有無、検収の完了日、請求書の到着日では動かない。
  • 60日は上限で、できる限り短く定める。定めがなければ受領日、超えて定めれば60日を経過する日が期日とみなされる。
  • 月末締め翌月末払いは、月初の受領分で60日を超え得る。締め日を分けるか、受領日基準の台帳で管理する。
  • 遅延利息は、取適法は規則で年14.6%。フリーランス法に率の定めはなく、契約と民法419条で決まる。

結論:支払期日の起算は「受領した日」。検査をしても、請求書が遅れても、期日は動かない

フリーランスに仕事を頼んだとき、報酬をいつまでに払うかは、発注者が自由に決められるわけではありません。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」)4条1項は、従業員を使用する個人や、役員が二人以上いる法人などの「特定業務委託事業者」が業務委託をした場合の報酬の支払期日について、給付を受領した日(役務の提供を受ける委託では、役務の提供を受けた日)から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければならない、と定めています。しかも条文は「検査をするかどうかを問わず」と明記しています。検収が終わった日でも、請求書が届いた日でもなく、受け取った日が出発点です。

経理の現場では、「検収が済んで、請求書が届いてから、月末で締めて、翌月末に払う」という流れが自然に見えます。この流れ自体が誤りなのではなく、流れのどこを起算点として契約書や発注書に書くかが問題になります。請求書の到着や検収の完了を起算点にして支払日を決めると、受領から実際の支払までが60日を超えることがあり、その場合は条文に反する定めになります。反する定めをしたときは、4条2項により、受領した日から起算して60日を経過する日が支払期日とみなされます。契約書の文言が優先して通るわけではありません。

  • 起算点は、給付を受領した日(役務の提供を受ける委託は、提供を受けた日)。検査の有無・検収の完了日・請求書の到着日では動かない。
  • 60日は上限であり、「できる限り短い期間内」に定める義務もある。60日ぎりぎりに置くのではなく、社内の経理サイクルで可能な早さを選ぶ。
  • 支払期日を定めなかったときは受領した日、60日を超えて定めたときは60日を経過する日が、それぞれ支払期日とみなされる(4条2項)。
  • 元請として再委託する場合には、一定の事項を明示したときに限り、元の委託者からの支払期日を起算点とする30日の特例がある(4条3項)。
  • 遅延したときの利息は、取適法には規則で定める率があるが、フリーランス法の条文には率の定めがない。契約で決め、民法419条の枠で考える。

このページは、受領から支払までの経理の流れを条項に落とすことに絞っています。発注条件の明示の仕方は発注条件の明示のページ、報酬の額や方式の決め方は報酬の決め方のページ、検査の基準や期間は検収のページで扱います。なお、税の取扱いはここでは扱いません。金額は税込か税別かを明記するにとどめます。

条文の読み方:4条1項から6項まで、何が義務で何が特則か

4条は6つの項からなり、それぞれ働きが違います。1項が原則、2項が違反した定めと定めのない場合の補充、3項と4項が再委託の特例、5項が支払う義務そのもの、6項が前払金への配慮です。読むときは、「定め方の規制」(1項から4項)と「実際に払う義務」(5項)を分けて考えると、契約書と経理の両方が整理できます。

フリーランス法4条の構造(e-Gov法令検索で確認した条文の要旨)

4条1項

特定業務委託事業者が業務委託をした場合の報酬の支払期日は、検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日(役務の提供を受ける委託では提供を受けた日)から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければならない。

4条2項

支払期日が定められなかったときは受領した日、1項に違反して定められたときは受領した日から起算して60日を経過する日が、支払期日と定められたものとみなす。

4条3項・4項

元の委託者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が再委託をした場合で、再委託である旨・元の委託者の名称・元の委託業務の対価の支払期日などを明示したときは、元の委託業務の対価の支払期日から起算して30日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に定める。定めなかった場合・違反した場合のみなしの規定がある。

4条5項

特定業務委託事業者は、定められた(またはみなされた)支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、受託者の責めに帰すべき事由で支払えなかったときは、その事由が消滅した日から起算して60日(再委託の特例では30日)以内に支払う。

4条6項

再委託の特例の場合で、元の委託者から前払金の支払を受けたときは、着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をする。

4条の義務を負うのは「特定業務委託事業者」に限られます。従業員を使用しない個人や、役員が一人だけで従業員もいない法人が発注者である場合は、この条の対象になりません(対象の判定は対象になる発注者のページで整理しています)。発注条件を示す義務(3条)はすべての業務委託事業者にかかります。

報酬は「業務委託をした場合に特定受託事業者の給付に対し支払うべき代金」と定義されています(2条7項)。時間単価の報酬も、月額の報酬も、成果物の報酬も、実費の精算分も、この枠に入ると考えて設計するのが安全です。実費を報酬と別立てにして別の締め日で払う運用は、実費部分についても受領した日を考えておく必要があります。

もう一つ、「受領」の意味があります。物品や情報成果物では、発注者が現実に納品物を受け取った日が基本です。準委任のように役務の提供を受ける委託では、役務の提供を受けた日が出発点になります。継続的に役務の提供を受ける委託で、どの日を「提供を受けた日」と見るか、月をまたぐ役務をどう区切るかは、条文だけでは細部が決まりません。官公庁が公表している解説資料の原文で確認する必要があるため、このページでは細部を断定せず、条項の設計の観点から注意点を述べます。

請求書待ち・検収完了後払いの条項は、60日の枠とどこで衝突するか

業務委託契約書でよく見られる支払条項は、およそ次の三つの型に分けられます。「請求書の受領後○日以内に支払う」型、「検収の完了後○日以内に支払う」型、「毎月末日締めで翌月末日に支払う」型です。どれも経理の実務としては自然ですが、起算点がどこにあるかで、法定の起算との関係が変わります。

支払条項の型と、60日の枠との関係

条項の型起算点60日との関係で見るべき点
請求書の受領後○日以内に支払う請求書が届いた日請求書が遅れる、不備で差し戻される、と起算点が後ろへ動く。受領日から60日を超えるおそれがある。請求書の提出期限を決め、提出がなくても期日が来る書き方に直す。
検収完了後○日以内に支払う検収が完了した日検収に時間がかかると、受領日から見て60日を超え得る。検査の有無を問わず期日が決まるので、検収の期間を短く区切り、支払期日の上限は受領日基準で置く。
月末締め翌月末払い締め日(月末)月の前半に受領したものは、受領日から翌月末までが60日を超えることがある。締め日の取り扱いの考え方は官公庁の資料の原文で確認し、受領日から数えて余裕のある日に置く。
受領日から○日以内に支払う受領した日法定の起算と同じ。日数を60日以内にし、できる限り短く。振込日が休業日に当たる場合の扱いも書く。

請求書を起算点にしてしまうのは、悪意よりも、経理の事情から来ることが多いものです。発注者側では、請求書がなければ支払処理を起こせない、請求書の金額と発注内容を突き合わせたい、という社内事情があります。それ自体は正当ですが、そのための手当ては「請求書の提出を受領後一定の日数以内に求め、提出がなくても支払期日は動かない」という形で契約書に置けます。請求書がないまま期日が来る場合に備え、発注者側が支払内訳の通知書を出して支払う運用(いわゆる支払通知書による支払)を用意しておく方法もあります。

書き方の例(一般的な例) 支払条項(一般的な例)

起算点

よくある書き方甲は、乙から請求書を受領した日の属する月の翌月末日までに、報酬を支払う。
整えた書き方甲は、乙の給付を受領した日(役務の提供を受ける業務にあっては、提供を受けた日)から起算して○日以内(60日以内でできる限り短い期間)の日を支払期日とし、その日までに報酬を支払う。

理由請求書の到着ではなく、受領した日を出発点にそろえる。日数は60日以内で、経理が実際に守れる短い日数にする。

請求書の遅れ

よくある書き方乙の請求書の提出が遅れた場合、甲の支払期日はその遅れに応じて延長される。
整えた書き方乙は、受領後○日以内に請求書を提出する。請求書が提出されない場合も、前項の支払期日は変更されない。甲は、請求書の提出がないときは、自らの支払内訳に基づき支払うことができる。

理由請求書の遅れを理由に期日を延ばす条項は、4条1項・2項の枠とぶつかる。提出期限と、提出がなくても期日が来る旨をセットにする。

不備の扱い

よくある書き方請求書に不備があったときは、補正を受けた日から支払期日を起算する。
整えた書き方請求書に不備があるときは、甲は不備の内容を通知し、乙は速やかに補正する。ただし、支払期日は第○項のとおりとする。

理由不備の補正で起算点を動かさない。差し戻しを避けるため、請求書の記載事項は発注書の段階で示しておく。

検収完了後払いの型は、請負の考え方とは調和します。民法633条は、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則だと定めています。ただし、これはあくまで当事者が別段の定めをしない場合の民法の補充的な考え方です。フリーランス法4条の適用がある取引では、民法の考え方に従って検収後払いにしたつもりでも、受領から60日を超える定めは許されません。検収に時間がかかる取引では、検収期間の上限を決め、検収が長引いても報酬の支払期日だけは受領日から数える設計にします。この点は検収のページで、みなし検収の書き方と合わせて説明します。

条文例第○条(報酬の支払)

  1. 甲は、乙の給付を受領した日(第○条の業務のように役務の提供を受ける場合は、その提供を受けた日。以下「受領日」という。)から起算して○日以内の日を報酬の支払期日とし、その日までに、乙が指定する金融機関の口座への振込により、報酬を支払う。
  2. 乙は、受領日から○日以内に、報酬の額、対象となる業務その他甲が定める事項を記載した請求書を甲に提出する。請求書の提出が遅れた場合又は提出されない場合であっても、前項の支払期日は変更されない。
  3. 支払期日が金融機関の休業日に当たるときは、その前営業日に支払う。
  4. 振込手数料は甲の負担とする。金額は、税込か税別かを発注書に明記する。

日数は、60日以内でできる限り短い期間で、社内の経理サイクルに合わせて決めます(ここでは伏せ字)。前営業日払いとしているのは、休業日の翌営業日に延ばすと、受領日から数えた日数が増えるおそれがあるためです。

月末締め翌月末払いが60日を超える場面と、社内カレンダーの引き方

「うちは月末締め翌月末払いだから大丈夫」という理解は、半分だけ正しいものです。受領した日が月末に近ければ、翌月末までは約1か月で、60日には十分収まります。反対に、月の初めに受領したものを翌月末に払うと、約2か月となり、60日の境目に近づきます。具体的な例を日付で確かめておくと分かりやすくなります。

受領日が月初の場合の数え方の例(月末締め翌月末払い)

  1. 7月1日

    成果物を受領した(受領日)

    月末締めにすると、この受領分は7月分としてまとめて扱われる

  2. 7月31日

    月末締め。請求書を受け取る

    受領から約30日

  3. 60日目

    8月30日にあたる(受領日の当日を1日目と数えると8月29日)

    社内の支払日がこの日より後ろにあると、この受領分は60日の枠を超える

  4. 8月31日

    翌月末払いの支払期日

    受領日の翌日から数えると61日目。受領日の当日から数えると62日目で、いずれにしても60日を超える

受領日が月の途中や月末に近い取引では、翌月末払いでも60日に収まります。問題は、月の前半の受領分を、まとめて月末締め・翌月末払いにする運用です。数え方の細部(締め日の考え方を含む)は、官公庁が公表している解説資料の原文で確認してください。

経理の運用を整える方法は、大きく二つあります。一つは、月内の受領分を複数回に分けて締める方法です。たとえば、月の前半と後半で締め日を分け、それぞれの締め日から一定日数後に払う設計にすると、どの受領日からも60日に収まりやすくなります。もう一つは、受領日基準の支払日管理に切り替える方法です。受領日を台帳に記録し、受領日から数えた日数で支払期日を管理します。件数が少ないフリーランスへの発注なら、台帳運用のほうが確実なことが多いでしょう。

支払期日の管理で、発注前・受領時・支払時にやること

発注前

  • 発注書に、支払期日(日付または受領日から○日以内)と支払方法を書く。
  • 請求書の提出期限と、提出がないときの支払の扱いを決める。
  • 金額が税込か税別かを書く。

受領時

  • 受領日(役務なら提供を受けた日)を台帳に記録する。
  • 検収の結果にかかわらず、支払期日を台帳で管理する。
  • 納品物を受け取った事実を、メールの受信記録やファイルの保存日時で残す。

支払時

  • 期日の数営業日前に支払処理を起こす。
  • 休業日に当たるときは前営業日に払う。
  • 支払内訳を通知し、減額や相殺があるなら理由を明記する(減額は禁止行為との関係が別にある)。

減額・相殺・留保を支払処理に混ぜる運用は、禁止行為の点検のページで扱います。

継続的な業務で、月額の報酬を毎月払う委託(保守、運用代行、事務代行など)も同じです。役務の提供を受けた日が出発点なので、月額報酬の「当月分を翌月末払い」とする運用は、月の初めに提供を受けた分から数えると60日を超え得る点に注意します。月次の業務では、当月の末日に提供が完了したものとみなして整理する運用がしばしば行われますが、どのように整理してよいかは、官公庁の資料の原文で確かめたうえで、書き方を決めることが必要です。条文だけで「当月末日に提供を受けたことにしてよい」と断定することはできません。

期日を定めなかった場合・違反して定めた場合のみなし:両法で表現が違う

支払期日を契約書にも発注書にも書いていない取引は、実際には少なくありません。フリーランス法4条2項は、この場合は受領した日が支払期日とみなされる、としています。つまり、納品を受けたその日に払わなければならない扱いになります。さらに、明示の義務(3条)のうち支払期日の記載が欠けていることになり、別の問題も生じます(明示のページ)。

法定の期間を超えて定めた場合のみなしは、2項では「受領した日から起算して60日を経過する日」です。一方、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下「取適法」。旧称・下請代金支払遅延等防止法)3条2項は、「受領した日から起算して60日を経過した日の前日」とされ、表現が異なります。両法の文言を並べて読むと、みなされる日が1日ずれて見えますが、どちらで考えるにしても、契約書では60日よりも十分に手前に日を置くのが安全です。境目の1日を争う設計は、守る意味がありません。

みなし規定の言い回しの違い(e-Gov法令検索で確認)

フリーランス法4条2項

定めがなければ受領した日。60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して「60日を経過する日」。

取適法3条2項

定めがなければ受領した日。60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して「60日を経過した日の前日」。

取適法5条1項2号

代金をその支払期日の経過後なお支払わないことが禁止される。手形の交付や、期日までに現金化が困難な支払手段を用いることも含む。

フリーランス法には、支払期日の経過後に支払わないこと自体を禁じる号は5条1項に置かれていません。期日までに払う義務は4条5項に置かれています。取適法の対象となる取引かどうかは、資本金や従業員数の区分と委託の類型によります(対象の判定のページ)。

取適法の対象にもなり得る取引では、手形等による支払にも注意が必要です。取適法5条1項2号は、手形を交付することや、期日までに現金と引き換えることが困難な支払手段を使うことを、期日経過後の不払に含めています。フリーランスへの発注でも、支払方法に電子記録債権や手形を用いる運用は、取引の形によっては禁止行為に触れ得るため、一般に避けるのが無難です。フリーランス法の明示事項には、手形の金額・満期、電子記録債権の額・支払期日などの項目(規則1条1項)がありますが、これは「用いる場合に明示する」ための項目であって、用いてよいことを意味するものではありません。

元請として再委託するときの30日の特例と、受託者の責めによる遅れ

元の委託者から受けた仕事の全部または一部をフリーランスに再委託するとき、フリーランス法4条3項は特例を置いています。再委託である旨、元の委託者の名称、元の委託業務の対価の支払期日などを明示したときに限り、再委託の報酬の支払期日は、元の委託者から支払を受ける日(元委託支払期日)から30日の期間内で、できる限り短い期間内に定められます。この明示を欠くと、特例は使えず、通常の60日の枠に戻ります。

この特例は、「元の委託者から入金があるまで払わない」という条項を認めるものではありません。特例の内容は、起算点を元委託支払期日に置き換えたうえで30日以内に払う、というものです。元請が入金を受けられなくても、支払期日が来れば払う義務は残ります。再委託の明示事項と個人データの預託の注意は再委託のページで詳しく扱います。

もう一つ、4条5項ただし書は、受託者の責めに帰すべき事由で支払えなかった場合の扱いを定めています。たとえば、振込先の口座の指定が誤っていた、請求に必要な情報が提出されなかった、といった事情です。この場合は、その事由が消滅した日から60日(再委託の特例では30日)以内に払えばよいことになります。ただし、発注者の側の都合や社内手続の遅れは「受託者の責めに帰すべき事由」に当たりません。条項に書くときは、受託者の責めによる遅れの例を限定して書き、発注者側の事情を混ぜないようにします。

確認の問いと理由支払条項を書く前に、発注者が確かめておく問い

  1. 受領日を、誰が、どの記録で確定するか

    期日の出発点は受領日です。納品メール、アップロードの記録、報告書の提出日など、確定の根拠を決めておかないと、期日の管理ができません。

  2. 請求書の提出期限と、提出がない場合の扱いを決めたか

    請求書の遅れが起算点を動かす書き方を避けるためです。提出がなくても期日が来る旨を書きます。

  3. 月末締めの運用で、月初の受領分が60日を超えないか

    運用の穴は、月の前半に受領した分に出ます。締め日を分けるか、受領日基準の台帳に切り替えます。

  4. 検収や不具合の指摘を理由に、報酬の支払を止める条項はないか

    報酬の留保や減額は、期日の問題だけでなく、禁止行為との関係が生じます。禁止行為の点検のページを確認します。

  5. 再委託の場合に必要な明示をしているか

    30日の特例は、明示をして初めて使えます。元の委託者の入金待ちの条項と混同しないようにします。

遅延利息:取適法は規則で年14.6%、フリーランス法は条文に率がない

取適法6条1項は、支払期日までに代金を支払わなかったときは、受領した日から起算して60日を経過した日から支払をする日までの期間について、公正取引委員会規則で定める率を乗じた遅延利息を支払わなければならない、としています。規則(令和7年公正取引委員会規則第9号)は、この率を年14.6パーセントと定めています(2026年1月1日施行)。減額をしたときにも、取適法6条2項により、減じた額について同様の遅延利息が生じます。

これに対し、フリーランス法の条文(1条から26条まで)には、遅延利息の率を定めた規定は見当たりません。したがって、フリーランス法のみが適用される取引では、遅延したときの損害賠償は、契約で定めた利率があればそれに、なければ民法の定めによって決まります。民法419条1項は、金銭の給付を目的とする債務の不履行による損害賠償の額を、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率で定めると規定し、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるとします。法定利率は、民法404条2項により年3パーセントを出発点とし、3項により3年を1期として見直される仕組みです。契約書に年14.6パーセントと書く例を見かけますが、それは取適法の規則の率であり、民法の法定利率ではありません。

書き方の例(一般的な例) 遅延損害金の条項(一般的な例)

利率の書き方

よくある書き方甲が支払を遅延した場合、年14.6%の割合による遅延損害金を支払う。(どの取引にも一律に書かれている)
整えた書き方甲が支払期日までに報酬を支払わなかったときは、支払期日の翌日から支払済みまで、年○%の割合による遅延損害金を支払う。ただし、取適法その他の法令が適用される取引では、法令に定める率による遅延利息の定めに従う。

理由率の根拠を取り違えない。適用される法令によって利息の発生の仕方が違うことを、条項の中で受け皿にしておく。

空欄

よくある書き方遅延損害金は、年 %とする。(空欄のまま)
整えた書き方空欄をなくし、率と起算日を決める。

理由空欄のままでは、民法の定めに戻る。意図して戻すのか、決め忘れなのかを区別する。

遅延損害金の率は、発注者にとっては「払わなければ増える費用」であり、受託者にとっては「遅れを防ぐ誘因」です。利率の高低を争うよりも、期日どおりに払う運用を整えるほうが、契約書としても実務としても確実です。

起きがちなこと

支払期日まわりで起きがちなこと

  • 請求書が来ないので支払処理を起こせず、受領から2か月を過ぎていた。請求書の提出期限を定め、提出がなくても期日が来る運用にしておく。
  • 契約書に「検収完了後○日以内」と書いたため、検収の完了を待つうちに、受領から60日を超えた。検収の期間に上限を設け、報酬の期日は受領日基準で書く。
  • 月末締め翌月末払いにしているが、月の前半に受領したものが60日を超える場面があった。締め日を分けるか、受領日の台帳で管理する。
  • 発注書にも契約書にも支払期日がなかったため、納品日が支払期日とみなされる扱いになった。発注の段階で支払期日を必ず示す。
  • 遅延損害金の率を年14.6%と書いたが、その根拠を取り違えていた。適用される法令を確かめ、率と起算日を決める。
  • 元請として再委託したが、再委託である旨や元の支払期日を示していなかったため、30日の特例が使えなかった。明示事項を発注書の様式に組み込む。
  • 不具合の指摘を理由に報酬の全部を留保したまま期日を過ぎた。留保・減額の条項は、禁止行為との関係で事前に点検する。

よくあるご質問

月末締め翌月末払いなら、フリーランス法の60日以内に必ず収まりますか?

必ず収まるとは言えません。起算点は受領した日です。月の前半に受領したものを月末で締めて翌月末に払うと、受領日から数えて60日を超えることがあります。たとえば7月1日に受領して8月31日に払う場合は、受領日の翌日から数えても61日目です。締め日を分ける、受領日基準で台帳管理する、といった運用で調整します。月次の役務の締め日の扱いなど細部は、官公庁の解説資料の原文で確認が必要です。

請求書が届かないとき、支払期日を延ばしてよいですか?

延ばせません。フリーランス法4条1項は、検査をするかどうかを問わず、受領した日から起算して60日の期間内に定めるとしています。請求書の遅れを理由に期日を延長する条項は、この枠と食い違います。請求書の提出期限を決めたうえで、提出がなくても期日が来る書き方にし、必要なら発注者側の支払内訳に基づいて払う運用を用意します。

支払期日を決めずに発注した場合は、いつ払う扱いになりますか?

フリーランス法4条2項により、受領した日が支払期日と定められたものとみなされます。納品を受けたその日が期日になるため、通常の経理サイクルでは遅れて払うことになりがちです。また、支払期日は発注時に明示すべき事項(3条)でもあるので、発注の段階で書いておく必要があります。

「元請から入金があったら払う」という条項は有効ですか?

元の委託者の入金を条件にする条項は、フリーランス法の枠と合いません。再委託の特例(4条3項)は、再委託である旨などを明示したときに、元委託支払期日から30日以内に払うという形で起算点を置き換えるもので、入金がなければ払わなくてよいという意味ではありません。

遅延損害金は年14.6%と書けばよいのですか?

年14.6%は、取適法6条の遅延利息について公正取引委員会規則が定める率です。フリーランス法には率の定めがなく、契約に定めがなければ民法419条1項の法定利率(年3%を出発点とする変動制)が基準になります。契約で年14.6%と定めること自体は可能な場合がありますが、取引が取適法の対象かどうかで遅延利息の発生の仕方が変わるので、適用される法令を先に確認します。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

詳しい内容を見る

フリーランスへの発注の契約書・発注書の整備でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「フリーランスに発注する側の契約書と法対応ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成・点検だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る