このページの要点
- 仕様を出す責任は発注者にある。未確定の事項は、理由と予定日を添えて示し、定まったら直ちに出し直す。
- 資料の提供・回答期限・承認の遅れを発注者の協力義務として条項にし、遅れた分の納期の延長を書く。
- 追加の依頼は新たな発注として、内容・報酬・納期を明示し直してから着手する。
- 修正は「仕様に適合させる修正」と「仕様の変更」に分け、範囲外は新規の発注に切り替える基準を書く。
結論:仕様を示す責任は発注者にある。未確定の事項は示して後から出し直し、追加の依頼は新たな発注として扱う
フリーランスへの発注で、揉めごとの種になりやすいのは、報酬の額よりも、何を作るのか、どこまでが今回の仕事なのかが固まらないまま着手することです。発注者の側には「依頼の段階では細部が決まっていない」「作業を進めながら固めたい」という事情があります。一方、受託者は、決まっていないことに見積りを出せず、後から出てくる追加の依頼に報酬が付くのか分からないまま働くことになります。
この食い違いを、契約書と発注書でどう整えるかが、このページの主題です。出発点は二つあります。一つは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」)3条1項が、業務委託をしたときに直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを明示することを求めていることです。もう一つは、受託者の責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させたり、受領後にやり直しをさせたりして、受託者の利益を不当に害してはならない、という5条2項2号の禁止です。仕様が決まらないまま発注し、後から内容を変えさせ、やり直しを求め続けると、この二つの規定の両方に近づきます。
- 内容が定められないことに正当な理由がある事項は、明示を省くことができる。ただし、省いた事項については、定められない理由と、定める予定期日を示し、定まったら直ちに出し直す(3条1項ただし書・公正取引委員会規則1条1項12号)。
- 仕様書や技術要件は、受託者が見積りと納期を判断できる程度まで、発注者が出す。出せない部分は、未確定の事項として切り分ける。
- 資料の提供、質問への回答、承認の期限を、発注者側の協力義務として条項にする。その遅れで生じた納期の遅れ・やり直しの費用は、受託者の責任にしない。
- 追加の依頼は、新たな発注として内容・報酬・納期を明示し直す。口頭やチャットの一言で、当初の範囲を静かに広げない。
- 修正の回数と範囲は、当初の発注で決める。範囲を超える修正は、新規の発注に切り替える基準を書く。
業種を問わない発注全体の流れは全体像のページ、明示事項の項目ごとの書き方は発注条件の明示のページ、検査の基準と修正の関係は検収のページで扱っています。範囲外のやり直しを求めることが禁止行為に当たる場面そのものは、禁止行為の点検のページに置き、ここでは条項の設計に絞ります。
仕様が未確定のまま発注するとき:何を示し、何を後回しにできるか
フリーランス法3条1項は、業務委託をした場合は「直ちに」明示することを求めています。ただし書で、明示すべき事項のうち「その内容が定められないことにつき正当な理由があるもの」は、明示を要しないものとされています。この場合は、その事項の内容が定められた後「直ちに」明示しなければなりません。したがって、仕様が固まっていないからといって、発注そのものを遅らせる必要はありません。一方で、固まっていないことを理由に、何も示さずに着手させてよいわけでもありません。
公正取引委員会規則(公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則)1条1項12号は、明示を省いた事項(未定事項)がある場合には、その内容が定められない理由と、定めることとなる予定期日を、あわせて示すことを求めています。また、同条5項は、未定事項を後から明示するときは、当初の明示との関連性を確認できるようにしなければならないとしています。発注書に番号を振り、後から出す書面に同じ番号を書く、といった形です。
仕様未確定のときに関係する条文(e-Gov法令検索で確認した要旨)
フリーランス法3条1項
業務委託をした場合は、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法で明示する。内容が定められないことに正当な理由があるものは明示を要しないが、定まった後は直ちに明示する。
公正取引委員会規則1条1項12号
明示しない事項(未定事項)がある場合は、その内容が定められない理由と、内容を定めることとなる予定期日を示す。
同規則1条3項
報酬の具体的な金額の明示が困難なやむを得ない事情がある場合は、金額を定めることとなる算定方法の明示でもよい。
同規則1条5項
未定事項を後から明示するときは、当初の明示との関連性を確認できるようにする。
同規則1条4項
一定期間の業務委託について共通の事項は、あらかじめ示しておけば、その期間内の明示は「あらかじめ示したところによる」旨を明らかにすれば足りる。
「正当な理由」があるといえるのは、どのような場合か、「予定期日」はどの程度具体的に書くのか、といった運用は、公正取引委員会などが公表している解説資料の原文で確認が必要です。ここでは断定しません。
未定事項に回せる範囲を、実務の感覚で整理すると、次のようになります。報酬の額が、時間単価と稼働時間の積み上げで決まる業務では、金額そのものではなく算定方法を示せば足りる場合があります(規則1条3項)。成果物の細部の仕様が、企画の確定を待たなければ決まらない業務では、確定する予定の時期を示します。反対に、「何を依頼するか」という給付の内容の核心が空白のまま、抽象的な一言で発注するのは避けるべきです。核心が空白だと、「正当な理由があって定められない」というより、単に決めていない状態と見られやすいからです。
書き方の例(一般的な例) 発注書の未確定事項の書き方(一般的な例)
給付の内容
理由決まっていない事項と、その理由・予定日を発注の時点で書く。後から出す書面は、当初の発注書と結び付ける。
報酬の額
理由金額が決まらないなら、算定方法を書く。上限の目安と、超える場合の手順を添える。
納期
理由納期の起点を決めることで、仕様確定が遅れたときの納期の動き方を、あらかじめ共有できる。
仕様書・技術要件に書くこと:受託者が見積りと納期を判断できる最低限
仕様書といっても、立派な書面が必要なわけではありません。受託者が、費用と時間を見積もれるだけの情報が、発注者から出ているかどうかが問題です。発注者が頭の中で完成形を持っていても、それが言葉にされていなければ、受託者は想像で作るしかありません。想像で作ったものに「イメージと違う」と言って修正を求めると、修正の回数が増え、報酬の割に作業量が膨らみます。
仕様書・依頼書に入れておきたいこと
- 目的:何のために使う成果物か(用途・使う場所・使う媒体)。
- 成果物:種類・数量・形式・納品の方法(データの形式、ファイルの命名、納品先)。
- 品質の基準:どこまでできていれば完成か(検査の基準。主観的な「満足」ではなく、確認できる項目で)。
- 前提:発注者が提供する資料・素材・アカウントと、その提供時期。
- 制約:使ってよいツール、使ってはならない素材、守るべき規格やガイドライン。
- 範囲外:今回の発注に含まれない作業(運用、保守、追加の企画など)。
- 作業の区切り:中間の確認の機会(案の提示、方向性の確認)と、確認の期限。
- 修正の取扱い:回数、軽微な修正の範囲、範囲を超える修正の手続。
- 未確定の事項:決まっていないことと、その理由、決める予定日。
契約の性質(請負か準委任か)によって、仕様の置き方は変わります。請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(民法632条)。完成させる仕事の内容が特定されていなければ、完成したかどうかを判断できません。委任は、法律行為をすることを委託する契約で(643条)、法律行為でない事務の委託には準用されます(656条)。いわゆる準委任では、成果の完成ではなく事務の処理を委託するので、仕様に代えて、業務の範囲、稼働の条件、報告の頻度を書くことになります。名前が「業務委託契約」でも、これらのどちらに近いかで、書くべき中身が変わります(全体像のページ)。
仕様書は、発注者のための書類でもあります。受託者が何を作ろうとしているかを、発注者が確認でき、検査の基準にもなります。検収のページで述べるとおり、検査の基準を仕様と結び付けておかなければ、不合格と言える根拠が曖昧になります。
発注者の協力義務:資料の提供・回答期限・承認の遅れを条項にする
発注者が出す資料が遅れる、質問に回答しない、承認が出ない。こうした発注者側の遅れで、納期に間に合わなくなったとき、責任を誰が負うのかを、契約書で決めておく必要があります。契約書に何も書かないと、受託者の納期遅れとして扱われ、損害賠償や解除の話に発展しかねません。
民法には、この種の場面に当てはまる規定があります。債権者が債務の履行を受けることを拒み、または受けることができないために、履行の費用が増加したときは、その増加額は債権者の負担とされています(413条2項)。債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付(報酬)の履行を拒むことができません(536条2項)。債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は契約の解除ができません(543条)。債務の不履行や損害の発生・拡大に債権者の過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任と額を定めます(418条)。さらに、請負では、注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由に、追完・報酬の減額・損害賠償・解除をすることができない、とされています(636条本文)。ただし、請負人が指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別です(同条ただし書)。
発注者側の遅れと、民法上の手当て
| 発注者側の事情 | 関係する民法の規定 | 契約書で補う書き方 |
|---|---|---|
| 資料や素材の提供が遅れる | 413条2項(履行費用の増加は債権者負担)、418条(過失相殺) | 提供期限を決め、遅れた日数だけ納期を延ばす。待機の費用は協議する。 |
| 確認・承認の回答がない | 536条2項(債権者の責めによる履行不能)、543条(解除の制限) | 回答期限を定め、期限内に回答がないときの扱い(再確認、納期の延長)を書く。 |
| 発注者の指図どおりに作って不具合が出た | 636条(注文者の指図による不適合) | 指図を書面で残し、受託者が不適当と気づいたときに告げる義務を書く。 |
| 途中で内容を変えたいと言われる | 請負の報酬の考え方(632条、634条) | 変更は新たな発注として、報酬・納期を合意してから着手する。 |
条文例第○条(甲の協力)
- 甲は、乙が本件業務を行うために必要な資料、素材、情報及びアカウントを、乙の求めに応じ、第○条に定める期限(期限の定めがないときは、求めを受けた日から○営業日)までに提供する。
- 乙が甲に確認又は承認を求めたときは、甲は、乙が示した期限(期限の定めがないときは、○営業日)までに回答する。期限内に回答がないとき、乙は、再度確認を求めることができ、再確認の日から納期を延長することができる。
- 甲の提供の遅れ又は回答の遅れにより、乙の作業が中断し、又は再度の作業が必要になったときは、納期は遅れた日数に応じて延長される。この場合に乙に追加の費用が生じるときは、甲乙が協議する。
- 甲が乙に対して行う指示及び指図は、書面又は電磁的方法により行う。口頭による指示は、乙が記録して甲に送付し、甲が異議を述べなかった場合に限り、指示として扱う。
発注者の遅れを書く条項は、受託者を守るだけでなく、発注者の運用を整える意味があります。回答期限を条項にしておけば、社内の承認フローの遅れも早めに把握できます。
追加依頼の手順:新たな発注として明示し直し、報酬を足す
作業が進むと、「ついでにこれもお願い」という依頼が出てきます。小さな依頼であれば、受託者は好意で応じることが多いものです。しかし、そうした依頼が積み重なると、当初の報酬では見合わない量になり、受託者の側に不満がたまります。発注者にとっても、何に報酬を払ったのか、どこまでが範囲だったのかが不明になります。
法的な位置づけとしては、追加の依頼は、当初の委託とは別の、新たな業務委託と見るのが整理しやすい考え方です。新たな業務委託をした以上、フリーランス法3条1項の明示は、その追加の業務についても必要になります。追加のたびに契約書を作る必要はありませんが、追加の内容、報酬、納期を、メールやチャットなどの電磁的方法で示す必要があります。電磁的方法の要件は、公正取引委員会規則2条が定めています(電子メールその他の特定の相手へ伝達する電気通信、または電磁的記録媒体の交付。表示される事項が文字や記号であること)。
手順を簡単にするために、基本契約の側に「変更・追加の手続」を置く方法があります。発注者が、変更の内容を記載した書面を出し、受託者が、報酬と納期への影響を回答し、双方が合意した後に作業を始める、という流れです。建設分野の「変更指示書」のように、書面による合意を要件とするやり方は、他の業種でも参考にできます。
追加依頼の流れ(一般的な手順)
- 依頼
発注者が、追加したい内容を、発注番号と結び付けて文書で示す
口頭やチャットの一言ではなく、後から読める形で
- 見積り
受託者が、報酬・納期・当初の発注への影響を回答する
回答の期限を、基本契約で決めておく
- 合意
発注者が受け入れ、追加の発注として明示する
ここで、フリーランス法3条1項の明示にあたる事項が整う
- 着手
合意の後に作業を始める
合意前の着手は、報酬の争いの原因になりやすい
- 納品・検査
追加分を、当初分と区別して検査する
追加分の検査基準も、依頼の書面に書いておく
緊急の対応が必要で、合意を待てないときは、後からの合意を条件に着手する旨をメールで残します。
書き方の例(一般的な例) 追加業務の条項(一般的な例)
範囲外の作業
理由「関連する業務を誠実に」という書き方は、範囲を無限に広げる読み方を許してしまう。追加は、明示と受諾を要件にする。
報酬の追加
理由報酬に含めるのか、別立てにするのか、あらかじめ決める。含めるなら、その旨を明確に。
修正回数と軽微な修正:範囲外を新規発注に切り替える基準
制作系の業務では、修正の依頼が避けられません。修正の回数に上限を置くかどうかは、発注者の自由ですが、置き方によって、運用が大きく変わります。回数を数えない、無制限にする、あるいは「合理的な範囲で」とだけ書く。これらは発注者に有利に見えますが、受託者から見ると、報酬が定額で作業が際限なく増える構造です。無制限の修正は、発注者にとっても、完成が遠のく、受託者の意欲が下がる、見積りの根拠がなくなる、といった不利益を生みます。
修正の書き方の三つの型
| 型 | 内容 | 運用上の注意 |
|---|---|---|
| 回数制限型 | 修正は○回までとし、超える場合は有償とする。 | 「1回」の数え方(まとめて指摘した1通を1回か、項目ごとか)を決める。軽微な修正を回数に含めるか決める。 |
| 範囲限定型 | 当初の仕様に適合させるための修正は無償。仕様の変更に当たるものは有償。 | 何が仕様の変更に当たるのかを、仕様書とセットで説明できるようにする。 |
| 無制限・包括型 | 修正は完成までの間、回数を問わず対応する。 | 範囲が際限なく広がる。仕様の逸脱についての歯止めと、納期の延長の定めを添える。 |
修正の範囲を決めるときは、「当初の仕様に適合させるための修正」と「仕様そのものを変える修正」を分けるのが、最も説明しやすい整理です。前者は、受託者が仕様どおりに作っていないために必要な修正で、無償が筋です。後者は、発注者の考えが変わったために必要な修正で、新たな発注として扱います。この線引きが機能するには、仕様がきちんと書かれている必要があります。仕様書が曖昧だと、どちらの修正なのかを決める基準がありません。
軽微な修正(誤字の訂正、色味の微調整、文言の差し替えなど)の扱いも、決めておくと便利です。回数にカウントしない、あるいは1回の修正の中に含める、といった書き方があります。軽微な修正まで回数に含めてしまうと、受託者が「これは1回に数えるのか」と気を使い、発注者も修正を依頼しにくくなります。
修正をやり直しとして求める場面では、フリーランス法5条2項2号に注意が必要です。特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の内容を変更させ、または給付を受領した後(役務提供では提供を受けた後)に給付をやり直させることは、受託者の利益を不当に害する行為として禁止されています。この規定は、1項の「政令で定める期間以上」の継続の要件とは別に、2項として置かれており、業務委託の期間にかかわらず適用される構造になっています(5条1項と2項の構造は禁止行為の点検のページで整理します)。費用を発注者が負担するなど、受託者の利益を害しない形で行うのであれば、直ちにこの禁止に当たるわけではありませんが、条項の設計としては、範囲外の変更・やり直しの費用負担を明記しておくのが確実です。
条文例第○条(修正対応)
- 乙は、納品した成果物が仕様書の内容に適合していないときは、甲の指摘に基づき、無償で修正する。
- 甲が、仕様書の内容の変更に当たる修正(前項に該当しないもの)を求めるときは、その内容、報酬及び納期を甲が示し、乙の承諾を得て、追加の発注として行う。
- 誤字・脱字の訂正、色調の軽微な調整その他、乙の作業が○時間以内で完了する軽微な修正は、前項の追加の発注を要しない。ただし、軽微な修正が累積して著しい作業量となるときは、乙は協議を求めることができる。
- 甲の指示の変更又は甲の提供資料の誤りにより、乙の既に完了した作業をやり直す必要があるときは、そのやり直しに要する費用は、甲が負担する。
「軽微な修正」の時間数は、取引の規模に応じて決めます(ここでは伏せ字)。最後の項で、発注者側の都合によるやり直しの費用負担を明記しています。
途中で仕様が変わったとき:納期と報酬の調整をあらかじめ書く
仕様の変更は、当初から予定しておくべき出来事です。変更が起きたときに、納期や報酬をどう調整するのかを、条項として決めておくと、変更のたびに交渉を一から始めずに済みます。
変更が出たときの確認の順番
変更は、当初の仕様書の内容を変えるものか
はい追加の発注として扱う手順に進む。
いいえ仕様に適合させるための修正であれば、修正対応の条項で処理する。
作業量や必要な日数が増えるか
はい報酬・納期の調整を、書面で合意してから着手する。
いいえ作業量が変わらない軽微な変更であれば、通知のみで足りるか、基本契約の定めに従う。
すでに完了した作業のやり直しが生じるか
はいやり直しの費用負担を決める。発注者の都合であれば、発注者が負担する扱いが基本。
いいえ追加の費用は生じない。
変更の結果、当初の明示事項(給付の内容、報酬、納期)が変わるか
はい変更後の事項を、当初の明示と結び付けて、直ちに示し直す。
いいえ当初の明示のままでよい。
一つでも「はい」があれば、書面(メールやチャットでも可)で合意の記録を残します。
調整のルールとしては、たとえば次のようなものがあります。①変更の依頼を受けた受託者は、一定の営業日以内に、報酬と納期への影響を回答する。②発注者が回答に同意するまで、変更に係る作業は始めない。③同意に至らないときは、当初の内容で完成させるか、契約を終了させるかを協議する。④すでに行った作業の報酬は、進捗に応じて精算する(請負が完成前に解除された場合に、可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できる、という民法634条の考え方が参考になります)。
契約が準委任であれば、事務の処理にかかった時間に応じて報酬を払う設計が多く、変更による費用の増加は、稼働時間の増加として現れます。この場合は、稼働時間の上限(予算)を決めておき、超えそうなときに事前に協議する、というルールが有効です。報酬の方式の選び方は報酬の決め方のページで扱います。
起きがちなこと
仕様と追加依頼まわりで起きがちなこと
- 「詳細は追って」とだけ書いて発注し、その後の連絡がチャットに散らばり、何が発注内容なのか分からなくなった。未定事項は、理由と予定日を添えて発注書に残す。
- 資料の提供が遅れたのに、納期は当初のままで、遅れの責任を受託者に求めてしまった。発注者側の協力義務と、遅れたときの納期の延長を条項にしておく。
- 「ついでに」の依頼が重なり、気づけば当初の報酬の何倍もの作業になっていた。追加の依頼は、都度、新たな発注として報酬と納期を示す。
- 修正の回数を決めず、納品後も修正が続き、完成の判断ができなくなった。修正の回数と範囲、範囲外の扱いを、当初の発注で決める。
- 仕様書の記載が曖昧で、仕様に適合させる修正と、仕様の変更を区別できなかった。仕様は、検査の基準になる程度に具体的に書く。
- 発注者の都合で方向性が変わり、すでに完了した作業をやり直させたが、その費用を負担しなかった。発注者の都合によるやり直しの費用は、発注者が負担する旨を書く。
- 口頭の指示で作業を進め、後から「そんな指示はしていない」と言い合いになった。指示は文字で残し、口頭の場合は受託者が記録して送る運用にする。
よくあるご質問
仕様が決まっていない段階で発注してもよいですか?
発注すること自体は可能です。フリーランス法3条1項ただし書により、内容が定められないことに正当な理由がある事項は、明示を省くことができます。この場合は、公正取引委員会規則1条1項12号に従い、定められない理由と定める予定期日を示し、定まった後に直ちに明示します。何が「正当な理由」にあたるかの具体的な運用は、公正取引委員会などの解説資料の原文で確認が必要です。
追加の依頼は、メールやチャットで出せばよいですか?
追加の依頼が新たな業務委託にあたる場合、その内容、報酬、納期などの明示が必要になります。電子メールなど、特定の相手に伝達する電気通信で、文字や記号で表示される方法であれば、電磁的方法による明示として認められます(公正取引委員会規則2条)。ただし、受託者から書面の交付を求められたときの対応もあるため、記録が残る形で出し、報酬と納期を必ず入れます。
修正は何回まで頼めますか?
法律が回数を決めているわけではなく、契約で決めます。回数制限型、範囲限定型、無制限型などがありますが、仕様に適合させるための修正は無償、仕様そのものを変える修正は追加の発注、という整理が説明しやすい形です。受託者の責めに帰すべき事由がないのに、受領後にやり直しをさせることは、フリーランス法5条2項2号で禁止されています。
発注者の資料提供が遅れたせいで納期に遅れた場合、受託者の責任ですか?
一般に、発注者側の遅れによる履行の遅れは、受託者の責任とは言いにくい面があります。民法には、債権者の受領遅滞による費用の増加を債権者が負担する規定(413条2項)や、債権者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合に報酬の支払を拒めない規定(536条2項)などがあります。契約書に、発注者の協力義務、回答期限、遅れたときの納期の延長を書いておくことで、争いを避けられます。
仕様書がない場合、何から書き始めればよいですか?
まず、目的、成果物の種類・数量・形式、納品の方法、発注者が提供する資料、範囲外の作業、修正の取扱いを、箇条書きで書き出します。受託者が見積りと納期を判断できる程度が目安です。決まっていない事項は空欄にせず、未確定として理由と確定の予定日を書きます。仕様書は検査の基準にもなるので、確認できる項目で書くのが望ましいです。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁