このページの要点
- 発注の流れ(発注前、明示、作業、受領、検収、支払、終了)の段階ごとに、発注者が守ることと、約束を置く場所を決める。
- 条件の明示はすべての発注者に、支払期日や禁止行為などは従業員を使う発注者などに、配慮や予告は半年以上の継続的な委託に課される。
- 契約書は共通の条件、発注書やメールは案件ごとの条件、規約は多数への同一条件、という役割で分ける。
- 請負か準委任かは題名でなく内容で決め、報酬の発生時期と途中終了の扱いを型に合わせて書く。契約書がないまま始めた場合は、まず条件を示す。
結論:外注の流れの「どの段階で」「何を」守るのかを、先に一覧にする
フリーランスに仕事を頼む発注者は、「契約書を出さなければならないのか」「発注メールで足りるのか」と悩みがちです。しかし、法律が求めているのは、契約書という名前の書類そのものではありません。委託をした時点で、仕事の内容、報酬の額、支払期日といった条件を相手に示すこと。受け取った日から一定の期間内に報酬を支払うこと。受け取った後で、責めのない相手に一方的な減額ややり直しを求めないこと。こうした一つ一つの行為が、発注者の義務として定められています。契約書は、それらを一か所にまとめて残すための道具です。
そこで、このページでは外注の流れを発注前から終了まで七つの段階に分けます。段階ごとに、発注者が守ることと、その約束を置く場所(契約書の条項、発注書、社内の経理の運用など)を並べます。以下、法令名は次のように略して使います。
- フリーランス法:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)。個人で従業員を使わずに仕事を受ける人などを「特定受託事業者」とし、そこに業務を委託する側の義務を定めた法律です。
- 取適法:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律。旧名称は下請代金支払遅延等防止法で、2026年1月1日から現在の名称になっています。委託する側の資本金や従業員の数と、委託の類型で対象かどうかが決まります。
最初に押さえておきたい結論は、次の五つです。
- 条件の明示(フリーランス法3条)は、特定受託事業者に業務委託をするすべての事業者に及びます。発注者自身が従業員を使っていなくても、明示の義務は生じます。
- 報酬の支払期日、禁止行為、募集情報の表示、配慮の義務、予告の義務は、従業員を使う個人や二人以上の役員がいる法人などの「特定業務委託事業者」に課されます。さらに、禁止行為の一部は一定の期間以上の委託に限られ、配慮や予告の義務は半年以上の継続的な委託に限られます。
- 契約が成立するために、書面は要りません(民法522条2項)。しかし、法律上の明示は別の義務です。口頭で合意しただけでは、明示を果たしたことになりません。
- 報酬の支払期日は、検査をするかどうかにかかわらず、受領した日から数えます。請求書の到着や検収の完了を起算点にする書き方は、そのままでは60日の枠と食い違うおそれがあります。
- 成果物の権利、仕様の固まらない発注、検収、終了の通知は、法律の条文だけでなく、契約書と社内の運用で守る領域です。ここを整えると、禁止行為にも触れにくくなります。
自社が義務を負う側に当たるかの判定は対象になる発注者の判定のページで、明示の具体的な書き方は発注条件の明示のページで、報酬の決め方は報酬の決め方と書き方のページで扱います。
発注の流れと、各段階で発注者が負う義務の一覧
次の表は、外注の一連の流れを段階に分けて、義務の中身と根拠となる条文、このサイトで詳しく扱うページを整理したものです。条文は、e-Gov法令検索で現行のものを確認しています。
発注の流れと発注者の義務
| 段階 | 発注者がすること・してはならないこと | 主な根拠 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|
| 1 発注前(募集・見積り・お試し) | 募集情報を広告などで出すときは、虚偽や誤解を生じさせる表示をせず、正確かつ最新の内容に保つ。見積りやお試し作業の扱いを決めておく。 | フリーランス法12条(特定業務委託事業者) | 発注前の見積り・お試し作業 |
| 2 発注時(条件の明示) | 委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で示す。電磁的方法で示した後に書面を求められたら、遅滞なく交付する。 | フリーランス法3条、取適法4条 | 発注条件の明示 |
| 3 作業中(仕様・追加依頼・配慮) | 責めのない相手に内容の変更ややり直しを強制しない。追加の依頼は条件を示し直す。相談に応じる体制や、育児・介護への配慮を整える。 | フリーランス法5条2項2号、13条、14条 | 仕様と追加依頼、配慮と相談体制 |
| 4 受領 | 責めのない相手の給付の受領を拒まない(物品の製造や情報成果物の作成の委託で、一定の期間以上の委託)。受領した日(役務は提供を受けた日)が支払期日の起算日になる。 | フリーランス法4条1項、5条1項1号 | 禁止行為の点検 |
| 5 検収 | 検査をしても、支払期日は延びない。責めのない相手の報酬の減額や、受領後の引き取りの強制はしない。 | フリーランス法4条1項、5条1項2号・3号 | 検収の体制 |
| 6 支払 | 受領した日から60日の期間内で、できる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに払う。 | フリーランス法4条、取適法3条 | 報酬の支払期日 |
| 7 終了 | 半年以上続く継続的な委託を解除する場合や、期間の満了後に更新しない場合は、原則として30日前までに予告する。理由の開示を求められたら、遅滞なく開示する。 | フリーランス法16条 | 契約の終了と予告 |
表の「根拠」の欄に書いた条文の適用範囲は、義務ごとに違います。整理すると、次のとおりです。
義務ごとの適用範囲(フリーランス法)
3条(明示)
「業務委託事業者」に課される。特定受託事業者に業務委託をする事業者であれば、従業員の有無を問わない。
4条(支払期日)
「特定業務委託事業者」に課される。受領した日(役務の提供なら提供を受けた日)から60日の期間内で、できる限り短い期間内に定める。
5条1項(禁止行為)
特定業務委託事業者に課される。対象は政令で定める期間以上の業務委託で、その期間は施行令1条で「一月」とされている。更新により一月以上続くことになるものを含む。
5条2項(禁止行為)
特定業務委託事業者に課される。経済上の利益の提供の要求と、責めのない相手への内容の変更・やり直しの強制は、期間の限定がない。
13条・16条
配慮の義務(13条1項)と解除等の予告(16条1項)は、政令で定める期間以上の継続的業務委託が対象で、その期間は施行令3条で「六月」とされている。13条2項は、それ未満の委託について配慮を努力義務とする。
14条(相談体制)
特定業務委託事業者に課される。委託の期間による限定はない。
「従業員を使用する」の意味の細部は、法律本文だけでは確定しません。判断に迷う場合は、所管官庁の解説資料の原文で確認が必要です。
義務を果たす仕組みは、契約書の条項だけでは作れません。発注の現場(事業部門)、支払の担当(経理)、書類の管理(総務・法務の担当)のどこに、どの段階の確認を置くかで、守れるかどうかが決まります。社内の分担の一般的な例を、次に示します。
社内の分担の例(一般的な整理)
事業部門(発注の担当)
- 発注前に、相手方が個人か法人か、従業員を使っているかを確かめる
- 発注書の項目(給付の内容、受領の期日と場所、報酬の額)を埋めて送る
- 追加や変更が出たら、その場で相手方に示し直す
- 受領した日を記録し、検収の結果を経理に連絡する
経理(支払の担当)
- 受領した日から支払期日までの日数を、請求書の到着日ではなく受領日から数える
- 月末締めの運用が、月の初めの受領分で60日を超えないかを確かめる
- 請求書の不備があるときの扱いを、支払期日の枠との関係で決める(請求書の到着を支払期日の起算点にしない)
- 実費の精算の期日を決める
総務・法務の担当
- 基本契約と発注書の様式、規約を管理する
- 外注先の状況(従業員の有無、法人化)の変更を把握する
- 相談窓口と、申出があったときの記録を管理する
- 継続的な委託の契約期間を管理し、更新しない場合の予告の期限を知らせる
一つの部署に集めすぎず、受領日の記録は現場、支払の日付は経理、契約書の管理は総務、というように分けると、確認の漏れが減ります。
取適法は、これとは別に、委託事業者に支払期日の定め(3条)、明示(4条)、禁止行為(5条)、遅延利息(6条)、書類の作成と保存(7条)を課しています。同じ取引が、取適法とフリーランス法の両方に関わる場合があります(取適法の明示に関する公正取引委員会規則4条3号が、フリーランス法の業務委託に当たる場合に触れていることからも、両方が関わる場面が想定されていると読めます)。その場合のどちらがどう適用されるかは、条文だけでは断定せず、所管官庁の解説で確認します。取適法の判定の順番は判定のページに置いています。
契約書・発注書・メール・規約の役割分担
発注に使う書類は、契約書だけではありません。実務では、基本契約を一度結び、案件ごとに発注書やメールで条件を示す形が多く見られます。役割を分けて考えると、それぞれに何を書くかが決まります。
書類ごとの役割(一般的な整理)
基本契約(業務委託契約書)
- 継続的に使う共通の条件を置く(報酬の締め日と支払の方法、検収の基本ルール、権利の扱い、秘密保持、再委託、解除、相談窓口)
- 個別の発注書やメールとの優先関係を書く
- 共通の条件をあらかじめ示した書類としても使う
個別の発注書・メール・チャット
- 案件ごとに変わる事項を示す(委託日、給付の内容、受領の期日と場所、検査の完了期日、報酬の額と支払期日)
- 発注者が先に条件を示し、受注者が承諾する流れを残す
- 電磁的方法で示す場合の宛先と記録の残し方を決める
規約(定型約款)
- 不特定多数のフリーランスに同じ条件で発注するときに使う(募集プラットフォームや、登録制の外注窓口など)
- 規約の内容を相手が確認できる状態に置く
- 変更するときの手続を定める
契約書がなくても、個別の発注書やメールで明示事項がそろっていれば、明示の義務は果たせます。逆に、契約書があっても、案件ごとの事項が示されていなければ、明示は足りないことがあります。
契約の成立と、法律上の明示は、考え方が別です。民法では、契約は申込みと承諾で成立し、書面の作成は要りません(民法522条)。他方、フリーランス法3条は、委託をしたら直ちに一定の事項を示すことを義務としています。たとえば口頭で合意が成立していても、明示が行われていなければ、契約は有効に成立しているのに、法律上の義務を果たしていない、という状態になります。
基本契約と個別の発注の関係を書く条文では、個別の発注が成立する時点と、基本契約との優先関係を明確にします。次の条文は、一般的な考え方を示した例です。
条文例第○条(個別の発注)
- 甲は、乙に個別の業務を委託するときは、次の各号に定める事項を、書面、電子メールその他の電磁的方法により乙に示すものとする。(1)委託日、(2)業務の内容、(3)成果物の受領の期日及び場所(成果物がない場合は業務の実施の期間)、(4)検査をする場合はその完了の期日、(5)報酬の額及び支払期日、(6)その他個別に定めた事項
- 個別の発注の内容は、乙が前項の事項を受信した後、承諾する旨を通知した時に成立する。乙が○日以内に異議を述べなかったときは、承諾したものとみなす。
- 本契約と個別の発注の内容が異なるときは、個別の発注のうち、その旨を明示した事項に限り、個別の発注が優先する。
個別の発注が成立する時点と、基本契約との優先関係を、先に置く
条文の例にある「承諾したものとみなす」という書き方は、相手が着手した場合や、一定の期間内に異議がない場合に使われます。ただし、みなし承諾は、相手に不利な内容を一方的に決める手段として使うと、後で争いになります。報酬の額や納期など、重要な事項は、相手の意思が記録に残る形(返信メールやフォームの承諾)にしておくと、示したことと合意したことの両方を残せます。
規約で発注する場合は、民法の定型約款の規定(民法548条の2)が関わります。画一的な条件で多数の相手方と取引する場合の規約は、一定の要件で個別の条項に合意したものとみなされます。他方、相手の利益を一方的に害する条項は、合意をしなかったものとみなされます(同条2項)。規約で発注する場合に、書面交付を求められたときの特則があることは、発注条件の明示のページで整理します。
請負か準委任か:成果物の有無で変わる条項の置き方
業務委託契約書という名前の書類には、法律上の「業務委託契約」という型はありません。民法の上では、仕事の完成を約束する請負(民法632条)と、事務の処理を委託する委任・準委任(民法643条、656条)のどちらか、あるいは両方の性質を持つ契約として扱われます。どちらの色合いが強いかで、報酬の発生時期、途中で終わった場合の扱い、契約内容と違った場合の手当てが変わります。
請負と準委任の比べ方
| 項目 | 請負(仕事の完成) | 準委任(事務の処理) |
|---|---|---|
| 約束の中心 | 仕事の完成(民法632条) | 事務の処理そのもの(民法643条・656条) |
| 報酬の考え方 | 仕事の目的物の引渡しと同時に支払う(民法633条) | 特約がなければ請求できない。特約があれば、履行の後に請求する。期間で定めたときは、その期間の経過後に請求できる(民法648条1項・2項) |
| 途中で終わった場合 | 可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できる(民法634条) | 履行の割合に応じて報酬を請求できる(民法648条3項) |
| 成果に対して払う準委任 | ― | 成果が引渡しを要するときは、引渡しと同時に払う。途中終了では634条を準用する(民法648条の2) |
| 典型例 | 制作物の納品を前提とする業務 | 運用、事務、相談、定期的な支援などの業務 |
契約書の題名ではなく、内容で判断します。成果物の納品が中心なのに、毎月の稼働時間で報酬を払う形になっている、あるいは、日々の運用なのに、検収に合格しなければ報酬を払わない形になっている、といった場合は、契約の型と報酬の仕組みがかみ合っていません。かみ合わない状態は、検収の場面で争いになります。
書き方の例(一般的な例) 納品物がある月額制の業務の書き方
契約の型と報酬
理由月額で払う定期の業務と、納品を伴う仕事を、同じ条項で混ぜない。検査の合否で報酬の全部を止める書き方は、支払の義務や禁止行為の考え方と衝突しやすい。
途中で終わった場合
理由民法でも、可分な部分や履行の割合に応じた報酬の考え方がある。これを完全に否定する書き方は、後で争いになりやすい。
報酬の方式ごとの書き方は報酬の決め方と書き方で、検査と不適合の扱いは検収の体制のページで詳しく扱います。
契約書がない、口頭で始めてしまった場合の最低限
すでにフリーランスと口頭やチャットで仕事を始めている場合は、今からでも次の順に整えられます。契約書を一から作るのではなく、まず、法律が求める「示す」ことを後追いで行います。
今すぐ確認する項目
- 相手が特定受託事業者に当たる可能性があるか(個人で従業員を使っていない、一人だけの法人など)を確認する。
- 案件ごとに、委託日、給付の内容、受領の期日と場所、検査の完了期日、報酬の額と支払期日を、電子メールなど相手が受信できる方法で示す。
- すでに納品を受けた案件について、報酬の額と支払期日を整理し、受領した日から60日の期間内に支払えているかを確かめる。
- 示せなかった事項があるときは、内容が定められない理由と、定める予定の期日を示し、定まったら直ちに示す。
- 以後は基本契約と個別の発注書の形に切り替える。基本契約には、共通の条件と相談窓口、解除の予告、権利の扱いを置く。
確認の問いと理由契約書がないまま始めた場合に最初に確かめる問い
いつ、何を、いくらで頼んだか、記録が残っているか
明示事項の中心は、給付の内容、報酬の額、支払期日です。チャットの履歴やメールを集めると、示してきた事項と欠けている事項が分かります。
すでに受け取った成果物の日付と、まだ払っていない報酬があるか
支払期日の枠は、受領した日から数えます。契約書がないと、支払期日が定められていないものとして、受領した日が支払期日とみなされます(フリーランス法4条2項)。
契約書で補いたい事項は何か
成果物の権利、修正の回数、秘密保持、再委託、解除の予告は、口頭では決めにくい事項です。基本契約で補います。
この順で確認すると、書き直す範囲を絞れます。
なお、フリーランス法4条2項は、支払期日が定められなかったときは受領した日が、法律に違反して60日を超える日が定められたときは受領した日から60日を経過する日が、それぞれ支払期日と定められたものとみなします。契約書がないことが、そのまま「いつ払ってもよい」という意味にはなりません。
起きがちなことと、このサイトの読み順
外注を始めた発注者に起きがちなこと
- 最初は少額の単発の依頼だったため、契約書も発注書も作らず、チャットだけで進めた。回数が増え、期間も延びて、支払期日の数え方で社内の経理と食い違いが出てきた。
- 「基本契約を結んだから、個別の発注は口頭でよい」と考えた。ところが、案件ごとの給付の内容や報酬の額などが示されていなかった。
- 請負の仕事なのに、準委任のひな形を使っていた。納品物の修正や不具合の連絡の期間が条項になく、検収の場面で意見が分かれた。
- 外注先は一人の個人だと思っていたが、実際には法人化していたり、従業員を使っていたりして、適用される規定が変わっていた。
- 禁止行為は「悪意がある場合」だけだと考え、自社の雛形にある報酬の留保や再提出の条項を点検していなかった。
このサイトは、次の順に読むと、外注の流れに沿って確認できます。
- 対象になる発注者の判定:自社と外注先が、どの法律のどの義務に当たるか。
- 発注条件の明示と報酬の決め方と書き方:発注書と報酬の条項の土台。
- 報酬の支払期日、仕様と追加依頼、検収の体制:作業から支払までの運用。
- 禁止行為の点検と成果物の権利:契約書の雛形を点検するときの視点。
- 発注前の見積り・お試し作業と元請としての再委託:場面別の注意。
- 契約の終了と予告、配慮と相談体制、トラブルとよくある質問:継続的な取引と、問題が起きたとき。
違反があった場合の行政上の措置は、勧告と命令、命令に従わない場合の公表や罰金へと段階が進みます。たとえば、フリーランス法の明示義務の違反に対しては、公正取引委員会が勧告できます(フリーランス法8条1項)。勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらなかったときは、命令を出すことができ(同法9条1項)、命令に違反した場合は罰金(50万円以下)の対象になります(同法24条)。この手順の詳細はトラブルとよくある質問のページに置いています。
よくあるご質問
契約書を作らず、発注メールだけで進めても問題ありませんか?
契約の成立そのものには書面は要りません(民法522条2項)。フリーランス法が求める明示(3条)は、書面または電磁的方法(電子メールなど)で行えます。したがって、メールで必要な事項が示されていれば、契約書がなくても明示の義務は果たせます。ただし、成果物の権利、修正の範囲、秘密保持、解除の予告などはメールだけでは定めにくい事項なので、基本契約を別に結んでおくと、後で争いになりにくくなります。
基本契約を結んでいれば、個別の発注書は要りませんか?
基本契約で共通の事項を示し、案件ごとに異なる事項を個別に示す形が一般的です。公正取引委員会規則では、一定の期間の委託について共通の事項があらかじめ書面や電磁的方法で示されているときは、その期間内の委託の明示は「あらかじめ示したところによる」旨を示せば足りるとされています(公正取引委員会関係施行規則1条4項)。ただし、給付の内容や報酬の額など案件ごとに違う事項は、案件ごとに示す必要があります。
請負と準委任のどちらの契約書にすればよいですか?
契約書の名前ではなく、約束の中心で決めます。納品物の完成が約束の中心なら請負(民法632条)、運用や事務など事務の処理が中心なら準委任(民法656条、643条)です。成果に対して報酬を払う準委任もあります(民法648条の2)。両方の要素が混ざる場合は、業務ごとに分けて条項を置く方法があります。
従業員のいない一人の事業者が発注する場合でも、フリーランス法の対象になりますか?
明示の義務(3条)は、特定受託事業者に業務委託をする「業務委託事業者」に課されるため、発注者に従業員がいなくても生じます。他方、支払期日(4条)、禁止行為(5条)、募集情報の表示(12条)、配慮(13条)、相談体制(14条)、予告(16条)は、従業員を使う個人や二人以上の役員がいる法人などの「特定業務委託事業者」が対象です(2条6項)。
もう何か月も口頭で仕事を頼んできました。今からどうすればよいですか?
まず、現在進行中の案件について、給付の内容、報酬の額、支払期日などを電子メールなどで示します。次に、すでに受け取った成果物の受領日と、報酬の支払状況を整理し、受領日から60日の期間内に払えているかを確かめます。そのうえで、基本契約を結んで、今後は個別の発注で条件を示す形に改めます。示せなかった事項があるときは、その理由と定める予定の期日を示し、定まったら直ちに示します。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁