このページの要点
- 継続的業務委託(6か月以上。更新による継続を含む)の解除・不更新は、少なくとも30日前までの予告が必要(フリーランス法16条1項、13条1項、施行令3条)。
- 予告は書面、ファクシミリ、記録を出力できる電子メール等で行い、受信した時に到達したとみなされる(厚生労働省令3条)。
- 予告が不要なのは、災害等で困難な場合、再委託業務の大部分が不要となった場合、30日以下の個別契約、受託者の責めに帰すべき事由、受託者の事情による長期の不発注の場合に限られる(省令4条)。
- 理由の開示請求には遅滞なく応じる(16条2項)。ただし第三者の利益を害するおそれがある場合などは開示しなくてよい(省令6条)。契約書の任意解除・自動更新の条項を予告に合わせて整える。
結論:6か月以上続く委託を終えるときは、更新しない場合も含めて30日前までに予告する
フリーランスとの取引を終わらせたい、あるいは契約期間が満了するときに更新したくない、という場面で、発注者がまず確認するのは、自社が「継続的業務委託」の当事者かどうかです。特定業務委託事業者が、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)をしようとするときは、相手方の特定受託事業者に対し、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(フリーランス法16条1項)。継続的業務委託とは、政令で定める期間以上の期間行う業務委託をいい、契約の更新によって、その期間以上継続して行うことになるものも含みます(13条1項)。この期間は6か月です(施行令3条)。
予告をした後、特定受託事業者から契約の解除の理由の開示を請求された場合は、遅滞なく開示しなければなりません(16条2項)。予告義務に違反すると、厚生労働大臣が是正のために必要な措置を勧告でき(18条)、勧告に従わないときは命令と公表の対象にもなります(19条1項・2項)。
このページでは、発注者が契約を終わらせると決めてからの手順を、次の順に整理します。
- 予告義務の対象になる契約かどうかの確認。
- 予告の方法と、相手に届いたとみなされる時点。
- 予告が不要になる場合の範囲。
- 理由の開示請求への対応と、開示しなくてよい場合。
- 契約書の条項(任意解除、自動更新、解除条項の優先順位)の整え方。
- 民法上の解除との関係。
支払や精算に関わる部分は支払期日のページ、禁止行為との関係は禁止行為の点検のページで扱います。トラブルに発展した場合の流れはトラブル時のページにまとめています。
予告義務の対象になるかの確認
予告義務は、すべての業務委託に及ぶわけではありません。条文の文言から、次の条件が重なるときに働きます。一つでも欠ければ、フリーランス法16条の予告義務の対象ではありません。ただし、予告義務の対象外でも、契約の定めや信義に基づく配慮は別に必要です。
予告義務の対象かを順に確認する
自社は特定業務委託事業者(従業員を使用する個人、または二以上の役員がある、もしくは従業員を使用する法人)ですか。
はい次の問いへ。
いいえ16条の義務の主体ではない。ただし、取引の相手方との契約の定めには従う。
相手方は、特定受託事業者(従業員を使用しない個人、または一の代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人)ですか。
はい次の問いへ。
いいえ16条の予告義務の対象ではない。
その業務委託は、6か月以上の期間行うものですか(契約の更新により6か月以上継続して行うことになるものを含みます)。
はい継続的業務委託にあたる。次の問いへ。
いいえ継続的業務委託にあたらず、16条の予告義務の対象ではない。
自社が、契約を解除しようとしていますか。または、契約期間の満了後に更新しないことにしていますか。
はい予告が必要。次の問いへ。
いいえ自社からの終了ではないので、16条の対象外。
下の「予告が不要な場合」のいずれかにあたりますか。
はい予告が不要になる場合がある。範囲は限定的に考える。
いいえ30日前までの予告が必要。
特定受託事業者に当たるかどうかは、取引の相手を確認して判断します。確認方法は対象の判定のページで扱います。
契約を更新して続けてきた場合の期間は、直近の更新後の期間だけではなく、更新を重ねて通算で続いた期間で見ます。契約書上は単発の契約が連続しているだけに見えても、実態として同じ業務を続けているなら、通算を意識しておく必要があります。どの時点から対象になるかといった細かな扱いは、所管官庁の資料を原文で確認する必要があります。
また、双方が合意して契約を終わらせる場合や、受託者の側から終了を申し出た場合は、発注者が一方的に解除しようとする場面ではないため、16条の予告義務とは別に整理されます。合意による終了がどこまで予告義務の外にあるのかについては、所管官庁の資料を原文で確認する必要があります。
予告の方法と、届いたとみなされる時点
予告は、次のいずれかの方法で行わなければなりません(厚生労働省令3条1項)。
- 書面を交付する方法。
- ファクシミリを利用してする送信の方法。
- 電子メールその他の電気通信の送信の方法(特定受託事業者がその記録を出力して書面を作成できるものに限る)。
口頭だけの予告や、記録が残らないチャットの一言では、この方法には当たりません。また、ファクシミリによる予告は特定受託事業者の使用に係るファクシミリ装置で受信した時に、電子メール等による予告は特定受託事業者の使用に係る通信端末機器等で受信した時に、それぞれ特定受託事業者に到達したものとみなされます(同条2項)。つまり、送信した日ではなく、受信した時が基準になります。
予告から契約終了までの日数の図(一般的な考え方)
- 予告の到達
予告が特定受託事業者に届いた(受信した)時。
送信した日ではなく、受信した時が基準。
- 理由の開示請求
特定受託事業者は、予告された日から契約が満了する日までの間に、理由の開示を請求できる。
16条2項。請求を受けたら遅滞なく開示する。
- 30日前
少なくともこの日までに予告が到達していなければならない。
日数の数え方は、初日を算入しないという民法の原則(140条)を踏まえ、余裕を持たせる。
- 契約の終了
解除の効力が生じる日、または契約期間の満了日。
更新しないときは、期間の満了日。
「30日前まで」の数え方に迷うときは、ぎりぎりの日を避けて、数日の余裕を持たせて送ります。
条文例予告の通知に書く項目(通知文の例)
- 貴殿との間の業務委託契約(契約の名称、締結日)について、契約期間の満了日である○年○月○日をもって更新しないことを、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第16条第1項に基づき予告します。
- 本件に関する終了日までの業務の取扱い(引継ぎ、納品物の確認、報酬の精算の時期)は、別紙のとおりです。
- 本予告を受けて、解除(更新しないこと)の理由の開示をご希望の場合は、予告を受けた日から契約が満了する日までの間に、下記の方法でご請求ください。【連絡方法の記載】
通知文は、契約の特定、終了日、法令に基づく予告であること、理由開示の請求方法を入れる(一般的な例)。
予告が不要な場合の範囲
予告義務には例外があります。災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、予告は要りません(16条1項ただし書)。厚生労働省令4条は、次の場合を定めています。
予告が不要な場合(厚生労働省令4条)
| 号 | 場合 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 1号 | 災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合。 | 予告が「困難」であることが必要で、準備不足や費用の節約は理由になりません。 |
| 2号 | 元請として再委託をした場合に、元の業務に係る契約が解除されるなどして再委託した業務の大部分が不要となった、その他直ちに契約の解除をすることが必要と認められる場合。 | 再委託の仕組みがある場合の例外。元委託者との契約の解除の経緯を記録しておく。 |
| 3号 | 基本契約に基づいて業務委託を行う場合や、契約の更新により継続して業務委託を行うこととなる場合で、契約期間が30日以下である一の業務委託に係る契約の解除をしようとする場合。 | 個別の契約が短期のとき。基本契約全体の終了を、ここで済ませることはできない点に注意。 |
| 4号 | 特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに契約の解除をすることが必要と認められる場合。 | 受注者に重大な違反がある場合に限られる。軽微な遅れや品質の不満だけでは足りないと考えて運用する。 |
| 5号 | 基本契約を締結している場合で、特定受託事業者の事情により、相当な期間、基本契約に基づく業務委託をしていない場合。 | 受託者の側の事情で仕事を受けられなかった状態が続いたとき。 |
これらの例外は、条文上、狭く読むのが安全です。契約書に「当社が必要と認めるときは、予告なしに解除できる」と包括的に書いても、法令上の予告義務が消えるわけではありません。例外を契約書に取り込む場合は、省令の文言に沿って、場面ごとに分けて書きます。
理由の開示請求への対応
特定受託事業者は、予告がされた日から契約が満了する日までの間に、契約の解除(更新しない場合を含む)の理由の開示を請求できます。請求を受けた特定業務委託事業者は、遅滞なく開示しなければなりません(16条2項本文)。開示は、書面を交付する方法、ファクシミリを利用してする送信の方法、電子メール等の送信の方法のいずれかで行います(厚生労働省令5条1項)。到達の時点は、予告と同様、受信した時です(同条2項)。
開示しなくてよい場合も定められています。第三者の利益を害するおそれがある場合、他の法令に違反することとなる場合です(厚生労働省令6条)。たとえば、他の取引先の事情を明かさなければ理由が説明できない場合などが、一つの検討対象になりますが、範囲は限定的に考えます。
確認の問いと理由理由を書く前の確認
理由は、客観的に確認できる事実に基づいているか。
「期待に沿わなかった」といった主観的な評価だけでは、後から根拠を問われたときに説明が難しくなります。納期の遅延、成果物の不備、業務の終了、予算の縮小など、確認できる事実を書きます。
理由に、受託者が申出をしたこと、相談をしたことが含まれていないか。
フリーランス法は、公正取引委員会などへの申出を理由とした不利益な取扱いを禁止しています(6条3項)。ハラスメントの相談を理由とした契約の解除も禁止です(14条2項)。理由の開示が、これらの禁止に触れないか確認します(相談体制のページで扱います)。
開示した理由と、契約書に書かれた解除事由が、整合しているか。
契約書の解除事由に当てはまらない理由を挙げると、解除そのものの有効性が争われます。契約書の条項を確認してから、理由を整理します。
契約書の条項の整え方:任意解除、自動更新、優先順位
予告義務への対応は、個別の通知だけでなく、契約書の雛形にも落とし込んでおくと、毎回の判断がぶれません。よくある条項の問題と、整えた書き方の例を並べます。
書き方の例(一般的な例) 終了に関する条項
任意解除
理由任意解除そのものは契約で定められますが、継続的業務委託では予告と理由の開示の義務を、条文で受け止めておきます。
自動更新
理由更新しないことも16条の予告の対象です。更新拒絶の期限を、予告に必要な日数より短く設定すると、条文を守れなくなります。
解除条項が複数ある
理由優先関係が不明だと、予告が必要な解除なのか、すぐに解除できる事由なのかが争われます。予告の要否は条文の根拠ごとに判断します。
予告の例外
理由例外は、省令に書かれた場面に対応させて書きます。包括的な例外を置いても、法令上の義務は消えません。
基本契約と個別契約の二層になっている場合は、どちらの終了を予告の対象にするのかを意識します。基本契約を終了させると、その下にぶら下がる個別契約の発注がなくなりますから、実質的には取引の終了です。基本契約の終了を、予告の対象として扱うかどうかを、社内の運用で決めておきます。
終了を決めてから予告までの社内の流れ(運用の例)
- 契約の台帳に、契約の開始日、更新の有無、満了日、継続的業務委託にあたるかどうか、を記録してあるか。
- 更新しないと判断する期限を、予告に必要な日数から逆算して、満了日より十分に前に設定したか。
- 終了の理由を、確認できる事実(納期の遅延、業務の廃止、予算の変更など)で整理し、記録に残したか。
- 予告の通知文を、書面または記録が残る電子メール等で送る手順になっているか。送信した記録と、受信を確認できる記録を保管したか。
- 理由の開示を請求された場合の担当者と、回答の期限の目安を決めたか。
- 終了日までの引継ぎ、納品物の受領、報酬の精算の日程を、受託者と共有したか。
台帳の整備は地味な作業ですが、予告義務の事故の多くは「更新するかどうかの判断が満了日の直前になった」ことから起きます。更新の可否を判断する時期を満了日の何日前に置くかは、予告に必要な日数に、社内の決裁の日数と、受託者に伝えてから実際に届くまでの余裕を足して決めます。
民法上の解除・終了との関係
フリーランス法16条は、特別な予告義務を定めたものであり、民法上の解除の仕組みを置き換えるものではありません。民法上の解除の仕組みを整理すると、予告義務との関係が見えやすくなります。
終了の根拠ごとの考え方
債務不履行による解除(民法541条・542条)
- 相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できる(541条)。
- 履行の全部が不能などの場合は、催告なしで解除できる(542条)。
- 受託者の責めに帰すべき事由で直ちに解除が必要と認められるなら、予告義務の例外にあたる場合がある(省令4条4号)。
請負の注文者による解除(民法641条)
- 請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して解除できる。
- 予告義務の対象となる場合は、損害賠償とは別に30日前の予告が必要になる。
委任・準委任の解除(民法651条)
- 各当事者がいつでも解除できる。
- 相手に不利な時期に解除したときなどは損害賠償が必要(651条2項)。
- 継続的業務委託では、30日前の予告が別途必要。
予告の義務は、契約の種類にかかわらず、継続的業務委託であれば働きます。損害賠償の問題とは別に考えます。
たとえば、請負の途中で発注者の都合により契約を終わらせる場合、民法では損害を賠償して解除できますが、フリーランス法の予告も別に必要になり得ます。解除と同時に既にした仕事の割合に応じた報酬を支払うことになります(634条)。予告、精算、損害賠償のそれぞれが別の問題として並び立つため、通知文と精算の資料を分けて整理しておくと混乱しません。
このページで確認した条文
フリーランス法13条1項
継続的業務委託の定義(政令で定める期間以上の期間行うもの。更新により継続するものを含む)。
フリーランス法施行令3条
継続的業務委託の期間は6か月。
フリーランス法16条
解除等の予告(少なくとも30日前まで)と、解除の理由の開示。
厚生労働省令3条〜6条
予告の方法と到達の時点、予告が不要な場合、理由の開示の方法と開示しなくてよい場合。
フリーランス法18条・19条
厚生労働大臣による勧告、命令、公表。
民法541条・542条・634条・641条・651条
催告による解除、催告によらない解除、割合に応じた報酬、注文者による解除、委任の解除。
条文は e-Gov法令検索で確認しています。官公庁の解説資料の内容は、本ページでは断定していません。
起きがちなこと
契約の終了で起きがちなこと
- 更新しないことを、契約満了の直前に口頭で伝えただけで、予告として必要な方法が取られていなかった。
- 自動更新の拒絶期限が契約書で「満了の2週間前まで」とされていたが、予告義務は30日前までで、条項を直さないまま運用していた。
- 契約期間は3か月の単発契約が続いていたため、継続的業務委託にあたると意識しておらず、通算で6か月を超えていた。
- 理由の開示を求められたが、担当者の主観的な評価を書いたため、根拠を問われて説明に窮した。
- 解除事由が複数の条に分かれており、予告の要否の判断が担当者ごとにばらついた。
- 基本契約は終了させなかったものの、個別の発注を止めて、実質的に取引を終えていた。
よくあるご質問
契約期間が3か月の契約を、更新しないときも予告は必要ですか。
契約が通算で6か月以上続いている、または続く見込みのもの(継続的業務委託)は、更新しない場合も予告の対象です(フリーランス法16条1項、13条1項、施行令3条)。単発で3か月だけの契約が1回で終わるなら、6か月未満のため対象にならない可能性があります。更新を繰り返して通算が6か月以上になるものは、対象になり得ます。
予告はメールで送っても大丈夫ですか。
電子メール等の送信の方法も認められています。ただし、特定受託事業者がその記録を出力して書面を作成できるものに限られます(厚生労働省令3条1項3号)。口頭だけ、あるいは記録が残らない方法では足りません。到達したとみなされる時点は、メール等を受信した時です(同条2項)。
特定受託事業者に、理由を聞かれたら必ず答えなければなりませんか。
予告がされた日から契約が満了する日までの間に請求があれば、遅滞なく開示しなければなりません(16条2項)。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合と、他の法令に違反することとなる場合は、開示しなくてよいとされています(厚生労働省令6条)。
受注者に重大な違反があるときも、30日の予告が要りますか。
特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに契約の解除をすることが必要と認められる場合は、予告が不要です(厚生労働省令4条4号)。ただし、軽微な違反では足りないと考えて運用するのが安全です。事実を記録し、必要に応じて民法の催告による解除の手順も踏んでおきます。
契約書に「予告なしに解除できる」と書いてあれば、予告は不要になりますか。
契約書の定めだけで、法令上の予告義務が消えることはありません。予告が不要になるのは、省令に定められた場合に限られます。契約書の条項は、省令に対応する場面を分けて書き、継続的業務委託にあたる場合は予告と理由開示の手順を条文に含めておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁