このページの要点
- 禁止行為は、契約書の条項のタイプ(不合格なら減額、返品、相殺、再提出の無制限、一方的な変更)から点検する。
- 5条1項は1月以上の委託に限る。2項(経済上の利益の提供要求、責めのない変更・やり直し)は期間を問わない。役務の委託では受領拒否と返品は除かれる。
- 「受託者の責めに帰すべき事由がないのに」が限定。責めがあるときは、追完・減額請求・解除という民法の手続で処理する。
- 申出を理由とする不利益取扱いは禁止。取適法の対象取引では、支払遅延、手形等、費用変動時の協議拒否も加わる。
結論:禁止行為は「条項のタイプ」から点検する。1項は1か月以上の委託に限り、2項は期間を問わない
発注者が自社の契約書の雛形や発注の慣行を見直すとき、法律の条文を頭から読んでも、どの条項がどの禁止に当たるのかは見えにくいものです。そこで、このページでは逆に、契約書に入りがちな条項のタイプを並べ、そのタイプがどの禁止行為に結び付くかを点検する順序で整理します。「不合格なら報酬を減らす」「納品後は返品できる」「相殺して払う」「再提出は何度でも」「内容は発注者が決めて変更できる」といった条項です。
前提となる条文の構造を先に確認しておきます。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」)5条は、特定業務委託事業者の遵守事項を定めています。1項は、政令で定める期間以上の期間行う業務委託(契約の更新によりその期間以上継続するものを含む)に限って、受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたき・購入強制を禁止しています。その期間は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令1条により、1月です。2項は、期間の要件がなく、経済上の利益の提供要求と、給付内容の変更・受領後のやり直しによって、特定受託事業者の利益を不当に害することを禁止しています。
- 1項の五つの禁止(受領拒否・減額・返品・買いたたき・購入強制)は、1月以上の継続を前提とする業務委託に限る。単発の短い委託には適用されないが、2項は適用される。
- 役務の提供を委託する場合(準委任・運用・事務など)は、1項のうち、受領拒否(1号)と返品(3号)は適用の対象から除かれる。減額・買いたたき・購入強制は残る。
- 禁止の多くは「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに」という限定が付く。受託者に責めがある場合の処理は、禁止の外にある。
- 契約書に書いてあるから適法、とはならない。合意があっても、禁止行為に当たる運用は許されない構造である。
- 取適法の対象にもなり得る取引では、5条に同種の禁止が置かれ、支払遅延、申出を理由とする不利益取扱い、費用変動時の協議拒否などが加わる。
支払期日そのものの定め方は支払期日のページ、検査の基準と不適合の扱いは検収のページ、報酬の額の決め方は報酬の決め方のページに置いています。ここでは、それらの条項が禁止行為と重なる場面の点検に絞ります。
禁止行為の一覧:フリーランス法5条1項・2項、6条3項と、取適法5条
フリーランス法の禁止行為(e-Gov法令検索で確認した要旨)
5条1項1号
受託者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと(役務提供の委託では適用なし)。
5条1項2号
受託者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。
5条1項3号
受託者の責めに帰すべき事由がないのに、給付を受領した後に、その給付に係る物を引き取らせること(役務提供の委託では適用なし)。
5条1項4号
給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を、不当に定めること。
5条1項5号
給付の内容を均質にし、またはその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、または役務を強制して利用させること。
5条2項1号
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、受託者の利益を不当に害すること。
5条2項2号
受託者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の内容を変更させ、または受領後(役務提供では提供を受けた後)に給付をやり直させることによって、受託者の利益を不当に害すること。
6条3項
受託者が公正取引委員会または中小企業庁長官に違反の事実を申し出たことを理由として、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをすること。
1項・2項の義務を負うのは特定業務委託事業者です。6条3項は、業務委託事業者全般に課されます。
取適法5条の禁止行為(e-Gov法令検索で確認した要旨。対象となる取引に限る)
5条1項1号・4号
受領拒否と返品(受託者の責めに帰すべき理由がないとき)。役務提供委託と特定運送委託では適用なし。
5条1項2号
代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。手形の交付や、期日までの現金化が困難な支払手段の使用を含む。
5条1項3号
受託者の責めに帰すべき理由がないのに、代金の額を減ずること。
5条1項5号・6号
通常支払われる対価に比し著しく低い代金を不当に定めること(買いたたき)。自己の指定する物・役務の強制購入・強制利用。
5条1項7号
委託事業者の違反を公正取引委員会、中小企業庁長官、所管大臣に知らせたことを理由とする、取引数量の削減、取引停止その他の不利益取扱い。
5条2項1号〜4号
原材料等の対価の早期の控除、経済上の利益の提供要求、責めがないのに行う給付内容の変更・受領後のやり直し、費用の変動等で中小受託事業者が代金の協議を求めたのに応じず、必要な説明や情報提供をせず、一方的に代金を決定すること。
取適法の対象になるかどうかは、委託事業者・中小受託事業者の資本金や従業員数の区分と、委託の類型によります(対象の判定のページ)。
二つの表を並べると、共通点と違いが見えてきます。共通点は、受領拒否、減額、返品、買いたたき、強制購入、経済上の利益の提供、給付内容の変更・やり直しが、いずれにも置かれていることです。違いは、取適法には支払期日経過後の不払(手形等を含む)と、費用変動時の協議拒否が禁止行為として書かれている点、フリーランス法の1項には継続1月以上という期間の要件がある点です。取適法5条には、そのような期間の要件は書かれていません。
同じ取引が両方の法律に関わり得る場合に、どちらがどのように適用されるかは、条文だけでは断定できません。官公庁が公表している解説資料の原文で確認が必要な点であり、このページでは、両方の禁止を満たす形に雛形を整える、という安全側の考え方で整理します。
自社の発注を点検する順序:期間、委託の型、受託者の責めの有無
禁止行為の点検は、条項に入る前に、自社の発注がどの禁止に当たり得る位置にあるかを確かめるところから始まります。次の順序で確かめると、見落としが減ります。
禁止行為の点検の順序
発注先は、従業員を使用しない個人、または代表者一人だけの法人か(フリーランス法の対象か)
はい次へ。フリーランス法5条の対象になる。
いいえ取適法の対象になり得るかを、資本金・従業員数の区分で確かめる(対象の判定のページ)。
自社は、従業員を使用する個人、または役員が二人以上いる、もしくは従業員を使用する法人か
はい次へ。特定業務委託事業者として、5条の義務を負う。
いいえ5条の義務の対象にならない。ただし、明示(3条)と申出を理由とする不利益取扱いの禁止(6条3項)は残る。
業務委託は、1月以上の期間行うものか(更新で1月以上続くものを含む)
はい1項の五つの禁止と2項の二つの禁止の両方を点検する。
いいえ1項は適用されない。2項(経済上の利益の提供要求、責めがないのに行う変更・やり直し)だけを点検する。
役務の提供を委託するものか(準委任・運用・事務など)
はい1項のうち受領拒否と返品は除く。減額・買いたたき・購入強制と、2項を点検する。
いいえ物品・情報成果物の委託として、1項の五つ全部を点検する。
契約書や運用に、受託者の責めに帰すべき事由がないのに行う処理が含まれるか
はい禁止に当たるので、条項と運用を改める。
いいえ受託者に責めがある場合の処理は、禁止の外。ただし、責めの有無の判断を記録に残す。
各段階の判断は、事実関係によって変わります。条文で判断できない運用は、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が公表している解説資料の原文で確認します。
点検の結果、期間が1月未満の単発の委託であっても、雛形は1月以上の取引と共通で使われることが多いため、期間によって禁止の対象が変わることを前提に雛形を分ける必要はありません。むしろ、短期の委託からそのまま継続の取引に移ることがよくあります。最初の発注の段階から、禁止行為に触れない書き方にしておくほうが、後の手戻りがありません。
契約書に入りがちな条項のタイプと、禁止行為との関係
ここからは、条項のタイプごとに、どの禁止と結び付くか、どう整えるかを見ていきます。契約書の文言が禁止行為に「直ちに当たる」と断定できるものは多くありません。禁止に当たるかどうかは、運用と事実関係によるからです。しかし、条項の存在そのものが、禁止に当たる運用を後押しする構造になっている場合は、整えておくのが賢明です。
条項のタイプと禁止行為の関係
| 条項のタイプ | 結び付く禁止 | 整え方の方向 |
|---|---|---|
| 不合格なら報酬を減額(または全額留保)する | 5条1項2号(減額)。取適法5条1項3号 | 減額ではなく追完(修補・再提出)を求める手順にする。直らない場合は民法の減額請求(563条)の要件に沿う。受託者の責めに帰すべき事由があるときに限ることを書く。 |
| 納品後でも発注者が返品できる | 5条1項3号(返品) | 返品を契約不適合の追完・解除の手続に位置づける。受託者に責めがないのに引き取らせる運用は、条項で排除する。 |
| 発注者の損害賠償債権と報酬を一方的に相殺する | 5条1項2号(減額)。支払期日までの支払の義務(4条5項) | 相殺は、損害の額が合意または確定した場合に限る。損害を主張するだけでは相殺できない旨を書く。相殺の意思表示の方式と、期日までに払う義務を明記する。 |
| 再提出(修正)の回数に制限がない | 5条2項2号(受領後のやり直し) | 仕様に適合させる修補は受託者の責任、仕様の変更は新たな発注、と分ける。回数や範囲を、当初の発注で決める。 |
| 発注者がいつでも内容を変更できる | 5条2項2号(給付内容の変更) | 変更は、協議と合意(報酬・納期の調整を含む)を要件にする。受託者に責めがないのに一方的に変更させない。 |
| 検収の遅れや発注者の確認の遅れを理由に支払を延ばす | 4条(支払期日)。5条1項2号との関係 | 支払期日は受領日基準で置く。確認の遅れは発注者の協力義務として扱う。 |
| 報酬が低額で、根拠が不明 | 5条1項4号(買いたたき) | 見積りの経緯、同種の業務の相場、業務量の見積りを記録する。 |
| 発注者の指定する物やサービスを使う義務 | 5条1項5号(強制購入・強制利用) | 使用が必要な理由(品質の均質化など)を書く。強制ではなく、任意の選択肢にする。 |
表の最初の条項、「不合格なら減額」は、実務で最も多く見られるもので、慎重な整理が必要です。契約不適合があるとき、民法は、まず追完(修補など)を請求し、相当の期間を定めた催告に応じなければ代金の減額を請求できる、という順序を置いています(562条1項、563条1項)。この順序を無視して、発注者が単独で報酬を減らせると書くことは、民法の手続を飛ばし、かつ禁止行為に近づきます。
「相殺」の条項も同様です。相殺は、二人が互いに同種の債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときに、対当額で債務を免れる仕組みです(民法505条1項)。発注者が、受託者に対する損害賠償請求権を持っていると主張して、報酬から差し引くことは、損害の有無や額が争われている段階では、実質的な減額にほかなりません。相殺の条項を置くなら、損害が確定した場合に限る、報酬の支払期日は守る、といった歯止めを書きます。
書き方の例(一般的な例) 報酬の留保・減額・相殺の条項(一般的な例)
不合格時の報酬
理由留保・減額の一方的な権利ではなく、追完の請求と、民法の減額請求の手続に位置づける。受託者に責めがない場合を除外する。
相殺
理由主張だけの損害で報酬を止められないようにする。支払期日の義務との整合を条項の中で確認する。
返品
理由返品を、不適合の追完・解除の手続の中に置く。責めがないのに引き取らせる運用を排除する。
買いたたき・購入強制・経済上の利益の提供要求:報酬の設計と取引の外側の要求
5条1項4号の買いたたきは、給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を、不当に定めることを指します。ここで問題になるのは、「通常支払われる対価」と比べて「著しく低い」かどうかと、それが「不当に」定められたかどうかです。個々の案件が該当するかは、報酬の決定の経緯、他の取引先との比較、業務量の見積りなどを総合して判断されると考えられますが、判断の具体的な基準は官公庁の資料の原文で確認する必要があり、ここでは断定しません。実務上できることは、報酬を決めた根拠(見積り、業務量、相場の参照)を記録に残し、受託者との協議の過程を残すことです。
5条1項5号の強制購入・強制利用は、発注者が指定する物やサービスを、受託者に買わせたり使わせたりする行為です。正当な理由がある場合は除かれます。たとえば、品質を均質にするために、特定の素材やツールを使う必要がある場合です。この場合でも、その必要を契約書に書き、受託者が選べる範囲を残すなど、強制と受け取られない運用にします。
5条2項1号は、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、受託者の利益を不当に害することを禁止しています。委託の対価とは関係のない、協賛金の負担、キャンペーンへの協力、無償のサンプルの提供、無償の追加作業、発注者の別の仕事の手伝いなどが、典型的な場面として想定されます。委託の内容に含まれる範囲を超えて、無償で提供させるものは、点検の対象です。
確認の問いと理由報酬の設計と取引の外側の要求について、確かめる問い
報酬の額を決めた根拠は、記録に残っているか
買いたたきの点検では、決定の経緯が問われます。見積り、業務量の想定、相場の参照を記録します。
受託者の見積りより低い額で発注するとき、その理由を説明したか
一方的に下げるのではなく、業務の範囲を調整するなど、協議の過程を残します。
契約の対価に含まれない作業を、無償で依頼していないか
経済上の利益の提供要求にあたり得ます。追加作業は新たな発注として扱います(仕様と追加依頼のページ)。
協賛・キャンペーンへの協力・サンプルの提供など、取引の外側の要求がないか
受託者の利益を不当に害する場合があります。任意の依頼であること、対価や費用の負担を明確にすることを確認します。
特定の素材・ツール・サービスの使用を求めていないか
必要性があるか、受託者が選べる余地があるかを確かめ、必要な理由を書きます。
これらの行為は、独占禁止法の優越的地位の濫用(2条9項5号。継続して取引する相手方に、他の商品・役務を購入させること、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること、取引の対価の支払を遅らせ、またはその額を減じることなど)にも関係します。事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない(19条)とされており、フリーランス法の適用のない場面(たとえば発注者が従業員を使わない個人である場合)でも、優越的地位の濫用の考え方は残り得ます。ただし、独占禁止法上の判断は個別の事実による部分が大きく、条文だけで結論を断定することはできません。
申出を理由にした不利益な取扱いと、取適法で加わる禁止
フリーランス法6条1項は、受託者が、この章の規定に違反する事実があるとき、公正取引委員会または中小企業庁長官に申し出て、適当な措置をとるよう求められるとしています。6条3項は、業務委託事業者が、受託者がこの申出をしたことを理由として、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをすることを禁止しています。これは、禁止行為の点検の中で、見落とされがちな規定です。契約書の条項というよりも、発注の現場での対応、たとえば「申し出られたから、次の発注はしない」という判断に直結するからです。
取適法の対象になる取引では、同種の禁止が5条1項7号に置かれています。さらに、取適法には、支払期日の経過後に代金を支払わないことの禁止(5条1項2号。手形等による支払を含む)と、費用の変動などがあった場合に中小受託事業者が代金について協議を求めたのに、協議に応じず、必要な説明や情報の提供をせず、一方的に代金を決定することの禁止(5条2項4号)が置かれています。後者は、価格の見直しの要請があったときの対応を、発注者に求める規定です。値上げ要請への対応の考え方は報酬の決め方のページで整理しています。
申出・協議を受けたときの発注者の対応
やってはいけないこと
- 申出を理由に、発注の数量を減らす、発注をやめる。
- 価格の見直しの協議を求められたのに、無視する、または説明なしに一方的に決める。
- 申出をした受託者に、他の取引先への不利益な情報を流す。
やっておくこと
- 協議の申入れを受けたときの窓口と期限を決める。
- 協議の過程(申入れの日、回答の内容、説明した根拠)を記録する。
- 契約終了の判断が必要なときは、理由を整理し、予告の手順に従う(契約の終了のページ)。
申出を受けた後の行政の調査・勧告などの流れは、トラブルとよくある質問のページで扱います。
雛形を整える手順と、点検用のチェックリスト
雛形の点検は、一度やれば終わりではなく、取引の実態に合わせて繰り返すものです。次の手順が、実務では進めやすいでしょう。①雛形の全条項を、上の表のタイプに当てはめて拾い出す。②各条項について、運用の実態(実際に使っているか、どんな場面で使うか)を、担当者に確認する。③禁止行為に当たり得る運用があれば、条項と運用の両方を直す。④受託者に責めがあるときの処理は、禁止の外にある手続として、別に書く。⑤直した理由と日付を残す。
禁止行為の点検リスト(雛形と運用)
- 報酬の減額・留保の条項に、受託者の責めに帰すべき事由があるときに限る旨と、追完の手順がある。
- 返品の条項が、契約不適合の追完・解除の手続の中に位置づけられている。
- 相殺の条項が、損害の額が確定した場合に限られ、支払期日を動かさない書き方になっている。
- 再提出・修正の回数と範囲が、当初の発注で決まっている。範囲外の変更・やり直しの費用負担が書かれている。
- 発注者による内容の変更は、協議と合意を要件にしている。
- 報酬を決めた根拠(見積り・業務量・相場)を記録している。
- 指定する物・サービスの使用を求める場合は、必要な理由を書いている。
- 協賛・協力・無償の追加作業など、契約の対価に含まれない要求をしていない。
- 申出・協議の窓口と、記録の方法がある。
- 役務の提供を委託する場合と、物品・情報成果物を委託する場合で、適用される禁止が異なることを理解している。
条文例第○条(報酬の減額等の制限)
- 甲は、乙の責めに帰すべき事由がない場合には、乙の給付の受領を拒まず、報酬の額を減じず、受領した給付に係る物を引き取らせない。
- 乙の納品物が契約に適合しないときは、甲は、第○条(検査)及び第○条(契約不適合)の定めに従い、追完その他の措置を求める。報酬の減額は、同条の手続を経て行う。
- 甲は、乙に対し、本契約に基づく業務の対価に含まれない金銭、役務その他の経済上の利益の提供を求めない。
- 甲は、乙が公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣に対し、法令に違反する事実を申し出たことを理由として、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをしない。
法令の内容を契約書に写す書き方です。条文を写すだけでは運用は変わりませんが、社内で契約書を読む人にとっては、禁止の線が分かる効果があります。必要な範囲を確認して、取引に合う形にします。
点検した結果を、受託者に説明する場合は、条項を変えた理由を、「法令に沿って整えた」という程度で足ります。受託者にとっても、減額や相殺の歯止めが書かれた契約書のほうが、安心して受けられます。
起きがちなこと
禁止行為まわりで起きがちなこと
- 雛形に「不合格なら減額」と書いてあり、そのまま運用していた。追完を求める手順に直し、受託者に責めがある場合に限る。
- 損害を主張して報酬から差し引いたが、損害の有無が争われていた。相殺は、損害の額が確定した場合に限る。
- 仕様が曖昧なまま、何度も再提出を求め、発注者の都合で方向性を変えていた。仕様に適合させる修補と、仕様の変更を分け、後者は新たな発注として扱う。
- 契約の対価とは別に、キャンペーンの協力を無償で依頼していた。契約の外側の要求は、対価や費用の負担を明確にし、任意の依頼にする。
- 単発の短い委託なので1項は関係ないと考え、2項の点検もしていなかった。2項は期間にかかわらず適用される。
- 役務の委託に、物品の委託と同じ点検をして、返品や受領拒否を過大に気にした。委託の型で、適用される禁止が違うことを確認する。
- 申出があったことを理由に、次の発注を見送った。申出を理由とする不利益取扱いは禁止されている。判断の理由は別に整理して残す。
よくあるご質問
単発の短い業務委託でも、フリーランス法の禁止行為は関係しますか?
フリーランス法5条1項(受領拒否・減額・返品・買いたたき・購入強制)は、政令で定める期間以上の期間行う業務委託に限られ、その期間は施行令1条により1月です。ただし、5条2項(経済上の利益の提供要求、責めがないのに行う給付内容の変更・受領後のやり直し)には期間の要件がなく、短い委託にも適用されます。また、明示の義務(3条)は期間に関係なく課されます。
契約書に「不合格なら報酬を減額できる」と書いて、受託者も合意していれば問題ありませんか?
合意があっても、受託者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずることは、1月以上の業務委託では禁止されています(フリーランス法5条1項2号)。契約書に書いてあることは、禁止行為に当たる運用を適法にしません。受託者に責めがある不適合の場合は、追完を求め、期間内に追完されなければ減額を請求する、という民法の手続(562条、563条)に沿って整理します。
準委任の業務では、受領拒否や返品の禁止は関係ありませんか?
フリーランス法5条1項は、役務の提供を委託する場合(2条3項2号)には、1号(受領拒否)と3号(返品)を除くと定めています。したがって、準委任のように役務の提供を委託するときは、これらは適用の対象から外れます。ただし、減額、買いたたき、購入強制と、2項の禁止は残ります。取適法でも、役務提供委託では受領拒否と返品が除かれる構造です。
追加の作業を無償で頼むのは、禁止行為ですか?
契約の対価に含まれない役務を無償で提供させ、受託者の利益を不当に害する場合は、フリーランス法5条2項1号(経済上の利益の提供要求)に当たり得ます。追加の作業は、新たな発注として内容・報酬・納期を示すのが基本です。個々の依頼が該当するかは事実関係によるため、条文だけで断定はできません。
受託者が公正取引委員会に申し出たら、取引をやめてもよいですか?
受託者が6条1項の申出をしたことを理由に、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをすることは、6条3項で禁止されています。取引を終了する判断が必要な場合は、申出とは別の理由を整理し、契約の終了の手順(予告など)に従います。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、委託の内容や相手方の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 公正取引委員会 / 厚生労働省 / 中小企業庁